◎ ページ29
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｢まず呼び方な｣
｢お兄ちゃん……は、実の兄に申し訳ないかも｣
｢なら他に何がある？｣
結局戦力にならなかった田中さんには火加減を確認する係になってもらい、ほぼほぼ私が作った鍋を2人で囲む。味は田中さんが買ってきた鍋の元をぶち込んだから、普通に美味しい。
｢じゃあ、あの、樹くん…とか？｣
｢ま……ギリ妥協点ってとこか｣
｢では、樹くんで｣
｢うい｣
田中さん…もとい、樹くんは持参したビールに口を付ける。私も勧められたけど、苦くて飲めないって言ったら｢お子ちゃま｣と笑われた。
だってまだ20歳だもん。お酒の味なんて分からない。私が美味しく飲めるのは甘い缶チューハイくらいだし。
でもさ、何だかんだ面倒みがいい樹くんは、私が野菜を切ってる間に近くのコンビニで私の分のお酒まで買ってきてくれた。2人で飲んだ方が上手いじゃん？て、そんな台詞をくっ付けて。
｢確認しときたいんだけど、ストーカーとかには合ってない？｣
｢待ち伏せされたのは…昨日が初めてです｣
｢じゃあまだ何とも言えねーか｣
｢今日も居たんですよね…？｣
｢怖い…よな｣
｢はい……｣
思い出したくないこと聞いてごめんなって笑う樹くんは、自分は悪くないのに申しわけなさそうな顔をする。ふざけたとこもあるけど、この人はすごく優しい人なんだっていうのを痛いほど感じた。
お兄ちゃんのフリして守ってください。なんて、たぶん馬鹿げたお願い。そんなお願いを聞いてくれてる樹くんに気を使わせるのはすごく申し訳ない。
だから、そうね。守ってもらうこの1ヶ月は、この優しい人に私も何かしたい。強くそう思った。
｢つかぬ事を聞きますが…樹くんはいつもご飯どうしてます？｣
｢飯？最近はコンビニかな｣
｢そしたら私、樹くんのご飯作ります｣
｢や、それは……｣
｢要らない日は言ってくれれば作りませんし、嫌いなものも教えてくれたら入れません｣
だから、駄目ですか？決死の覚悟でそう言った私に樹くんは目尻にシワを寄せてくしゃっと笑った。大きな手のひらが伸びてきて私の頭を優しく撫でる。
｢いーの？｣
｢それはこっちこそ…樹くんのご迷惑じゃなければ……｣
｢迷惑なわけねーべ。温かいご飯、嬉しいよ？俺｣
｢じゃあ……｣
｢ん、お願いします｣
あ、でも食費は払わせろよ。そんなことを言った樹くんは楽しそうに笑って私の鼻をむぎゅっと摘んだ。
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sail(プロフ) - ゆらさん» そのように言って頂けてとても嬉しいです。これからの更新もよろしくお願いします！ (2020年12月9日 1時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - この小説大好きです！更新楽しみにしてます！頑張ってください(^_^) (2020年12月8日 16時) (レス) id: 52075201ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年11月23日 20時
