◎ ページ13
.
雨のせいで混んでるバスで人と人に押し潰されそうになっても、松村くんが盾になってくれてなんとか身体を支える。
｢松村くん、苦しくない？｣
｢苦しくないけど、ヤバい｣
｢え、どっか痛い？｣
｢Aと密着し過ぎて、ヤバい｣
俺、男の子だからさって耳元で言うのは反則だ。私だってこんなに松村くんとくっ付いてたらヤバいよって言ってやりたい。
｢な、触ってみて｣
｢へ？｣
｢俺の心臓、やばいから｣
まだ握られたままだった手が誘導されて、松村くんの心臓のあたりに持っていかれる。ドクドク脈打つそれに触れたら、な？って得意げに笑うからなんだか可愛いなって思ってしまった。
松村くんて知れば知るほど不思議な人。クールだとばかり思ってたけど、一緒にいる時間が長くなるほどに本当はけっこう楽しい人なんだもん。
｢Aはどう？ドキドキしてる？｣
｢…言わない｣
｢じゃあ確かめるわ｣
｢え、ちょ、どーやって…？！｣
でも、それでいて時々意地悪ですごく甘いんだからずるい。しかも、たまに見せられる大胆なところも松村くんの悪いとこ。だってもう、心臓が壊れちゃう。
｢ふふ、焦りすぎ｣
｢ま、また騙したな｣
｢騙してねえよ？ちゃんと確かめる｣
｢へ…？｣
クスって笑った松村くんに、今度は私がキョトンとする番だった。
そして気づいた時には正面から抱きしめられて、身体中が密着したせいで松村くんの鼓動と私の鼓動が混ざり合う。いつもより混んでるせいで、きっと誰も私達には気づかない。
｢やっぱAもドキドキしてんじゃん？｣
耳の後ろにあったかい息がかかった。あまりにもリアルなそれに、かあっと顔が熱くなった。元々熱かったけど、もう駄目耐えられない。ドキドキし過ぎて死ぬって。
｢わ、私ここで降りる！｣
救いだったのは、丁度バイト先の最寄りのバス停に停車したこと。松村くんの腕から抜け出してバスを降りる。
｢迎えに行くから先帰んなよ｣
って、離れる瞬間の彼の声には返事が出来なかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sail(プロフ) - ゆらさん» そのように言って頂けてとても嬉しいです。これからの更新もよろしくお願いします！ (2020年12月9日 1時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - この小説大好きです！更新楽しみにしてます！頑張ってください(^_^) (2020年12月8日 16時) (レス) id: 52075201ff (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年11月23日 20時
