◎ ページ35
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｢ちょ、長谷川どした｣
｢田中くん、まだこない…｣
｢試験終わったんだよね？｣
｢うん…｣
もう2月も半ばなのに、田中くんはまだ1度も塾に来ていなかった。そろそろ結果が出てもおかしくないはずなのに連絡ひとつない。
もはや、こんなに待ってるのになんで来ないのよって逆に怒りすら沸いてくる。
｢あんた田中くんに会いたすぎな｣
｢そりゃ、…会いたいよ｣
小川相手だから素直に言うけどね。試験の結果もすごく気になるけど、ただもう私は田中くんの顔が見たいのだ。
ちょっと甘いあの視線が、ご褒美をねだるあの声が、恋しい。
｢恋、だね｣
｢…うん｣
｢認めるんだ？｣
｢…いつの間にかね、私の真ん中に田中くんがいたの｣
そう、いつの間にか私は田中くんの事ばかり考えるようになっていた。会えない今は特に、暇ができる度に彼の事を考える。
テストできたかな？とか、大学行ったらサークルとか入るのかな？とか、バイトはどうするのかな？とか。
だからもう認めるよ、私は田中くんに恋してる。
｢ふーん、じゃ、そんなあんたに朗報｣
｢え、何？｣
｢さっきからカウンターに田中くん居るよ｣
｢ちょ、なんでそれ早く言わないの！｣
｢だって長谷川、めっちゃ恋する乙女の顔してたから｣
ニヤニヤする小川に何か言ってやりたかったけど、今はそれどころじゃなかった。早く田中くんに会いたかった。
走って講師室を出てカウンターへ向かう。
遠くに聞こえる聞きなれた声の声色は、明るい。
｢A先生、受かったよ｣
私の顔を見るなりそう告げた田中くんは、得意げな顔で『合格』の文字のある紙を広げた。
そしたら急にジーンときちゃって、目の奥が熱くなる。
｢ちょ、え、A先生っ、｣
人ってさ、嬉しすぎると涙がでるの。
本当に良かった。受かって、良かった。
｢おめでとう｣
久々に見上げた瞳は、私につられてちょっと潤んでた。それが可愛くて、愛しくて、柔らかい髪に触れたら、腰を屈めた田中くんが私の耳元で囁く。
｢これでやっと、先生と生徒じゃなくなるね｣
それが何を意味するかなんて、もう十分に分かってた。
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sail(プロフ) - ゆーみんさん» コメントありがとうございます！キュンキュンがお届けできて嬉しいです！ (2020年11月29日 16時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみん - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年11月29日 15時) (レス) id: 505bb2abee (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» タイトルの意味にまで気付いていただけてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします！ (2020年11月13日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初は間違いなく樹の目線だったタイトルが、最後の最後で長谷川先生のタイトルになったこと、お洒落すぎました。素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみにしています！ (2020年11月13日 10時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます。想いあってたのにすれ違った2人を書いていて、私も切なくなりました、、、これからも更新頑張ります！ありがとうございます！ (2020年11月5日 19時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年10月23日 11時
