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最後の授業が終わるまであと5分。ちょっとルンルン気分で教材をまとめていれば、横にいる田中くんに突っ込まれた。
｢先生、今日機嫌良いね｣
｢いつもいいよ｣
｢嘘、昨日俺が文法間違えたら殴ったじゃん｣
｢殴ってないし、デコピンしただけ｣
相変わらずちょっと近い高校生は、グイッと私に迫りおでこを主張してくる。
いやいや、そんな強くデコピンしてないし。腫れてもないでしょ。
｢ね、お詫びに今日一緒に帰って｣
｢今日は無理｣
｢じゃあ今日じゃなかったらいいの？｣
｢揚げ足とらないで｣
まったく、1回お家まで送ったからって二言目はそれだよ。最近はご褒美ほしいじゃなくて、一緒に帰りたいばっか。
そんなことしたら怒られちゃうし、私にも予定あるし。
駄目なもんは駄目よって言ったらチャイムが鳴った。まだ駄々をこねる田中くんを引きずって塾の出入り口まで連れていく。
｢お、今日はお外に連れてかれてる。珍しいね｣
｢もう自習室使える時間じゃないから｣
｢ふふ、田中くん残念ね｣
｢…うす、小川先生｣
途中、同期の小川に絡まれる。でも田中くんはなんか猫かぶってて大人しい。てかこの二人接点あったっけ？
｢田中くんて小川と知りあい？｣
｢いや、別に｣
｢でも知ってるっぽいじゃん｣
｢それは、A先生と仲良い人だから｣
口をもごもごさせて言う田中くん。なんか恥ずかしそう。
なによ、私と仲良い先生だから知ってるって、ちょっと嬉しいかも。
｢今度、小川の授業入れといてあげる｣
｢え、いいよ、先生の授業減るもん｣
｢じゃあ国語で？｣
｢だったらオーケー｣
高地くん泣くぞ〜って言ったら、田中くんが楽しそうに笑った。
なんだかんだ言って、やっぱり田中くんは可愛い。ちょっと図々しい所も別に嫌じゃない。
｢また明日ね｣
｢明日授業ないけど？｣
｢自習！｣
｢はあい｣
目元をくしゃとした田中くんは、小さく私に手を振った。扉が閉まれば急に周りが暖かくなって、さあ片付けしようって踵を返す。
授業ブースを清掃して、北斗ももう終わったなーって講師室に向かえば数人の話し声が聞こえた。
聞こえる声はあんま絡んだことのない後輩で、中に入るのを一瞬ためらう。北斗の声もするけど、なんか入れなかった。
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sail(プロフ) - ゆーみんさん» コメントありがとうございます！キュンキュンがお届けできて嬉しいです！ (2020年11月29日 16時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみん - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年11月29日 15時) (レス) id: 505bb2abee (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» タイトルの意味にまで気付いていただけてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします！ (2020年11月13日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初は間違いなく樹の目線だったタイトルが、最後の最後で長谷川先生のタイトルになったこと、お洒落すぎました。素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみにしています！ (2020年11月13日 10時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます。想いあってたのにすれ違った2人を書いていて、私も切なくなりました、、、これからも更新頑張ります！ありがとうございます！ (2020年11月5日 19時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年10月23日 11時
