153話 久しぶり。会いたかった ページ38
我ながら馬鹿だと思う。
自分の知っているAではないかもしれないのにクラスまで聞き出して、会うために勉強を教わるという口実まで用意して。
全部全部、気持ち悪いほど馬鹿らしい。
そう思っていても、どうしても期待が勝ってしまう。
もし、もし本当にAだったらどうしよう。
どのような顔で、どのような声で何と話せばいいのだろうか。
いざその時が迫ったら頭の中が真っ白になりそうで恐ろしい。
そもそもAは覚えているのだろうか。
本当に人違いだったりAの記憶から消え失せていたら、期待した分、悲壮感は尋常でないほど重いだろう。
だとしても覚えていようがいなかろうが、その時はその時だ。
覚えていないのなら一から教え、一から新しく記憶を作っていけばいい。
この感情の名はとうに知っている。
友人に向ける親愛とは違った、愛情。
無駄に長ったらしいホームルームが終わり、Aがいるであろう教室に向かおうとするが今日に限って人に捕まる。
ようやく振り切ったかと思えば、もう人はまばらで静寂が広がっていた。
これはやらかしてしまったかもしれない。
いや完全にやらかした。
いないだろうがAの教室をひっそりと覗く。
瞬間、青色の双眸が見開かれた。
その瞳に映ったのは紛れもなくAだった。
幼い頃で止まっているAの記憶が再び動き出す。
綺麗な横顔だと思った。
スマホに夢中になっているせいか、少し下を俯いていて輪郭がはっきりと見える。
子供らしい柔らかい曲線とは違った鮮明な形を象っているが、顔つきはまあまあ幼さが残っていて。
変わってなくてよかった。
手に滲む汗を握りしめながらドアを開ける。
「お前、AAか?」
隠れた顔がゆっくりとこちらを見た。
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モヨモヨ(プロフ) - 簡潔おめでとうございます!!!マジですきだ!!きまさんの文でしか得られない栄養が、ある。言葉選びが毎度素敵だし、なにより表現のしかたがドストライクすぎる。すき 小説を書いてくれてありがとう。きまさんも小説も大好きだ……更新お疲れ様でした! (1月3日 1時) (レス) @page48 id: 3d85c557d8 (このIDを非表示/違反報告)
コン(プロフ) - 初コメ失礼します!完結おめでとうございます!!主人公と凛ちゃんの関係の移り変わり方が好きすぎて何回も読み返しました。ずっとドキドキしながら読んでいました!本当に大好きな作品です!完結したのは正直悲しいですが素敵な作品をありがとうございました!! (12月31日 20時) (レス) id: 367d94bba3 (このIDを非表示/違反報告)
にんじゅん(プロフ) - はじめまして、初めてコメントします。貴方様の書く凛と男主の関係性がものすごく大好きです。男主くんの掴めそうで掴めない距離感のもどかしさだったり、凛のほろ苦い心情が読んでいて「はぁ〜っ……!」とキュンとします。これからも続きを楽しみにしております。 (6月30日 22時) (レス) id: 9723d369eb (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - リアムさん» コメントありがとうございます!個人的に凛ちゃんさんを書くの苦手なので続きが気になる展開にできて嬉しゅうございます!ぶっ倒れない程度に更新頑張ります!! (6月18日 19時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
リアム(プロフ) - 凛!一体どうしたんだ〜!続きが気になるので、楽しみにしています!無理のない範囲で更新頑張ってください! (6月17日 9時) (レス) @page32 id: 5aa1bb0c09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年4月12日 22時