141話 ある生徒の恋慕 ページ26
ちょっとかっこいいなあって思った。
部活動見学のとき、一年生同士っていうこともあってほんのちょっとだけど話したのを覚えてる。
あっちは覚えてないだろうけど、そこで惚れちゃったんだから私って恐ろしいほど惚れっぽい性格なんだなって自分でも笑えてくる。
「同じクラスがよかったなぁ……」
「またA?あんたも飽きないね〜」
「うるさいなぁ」
親しい友人に恋路の相談をしても流されるばかり。
私がしつこいってこともあるけど、クラスも違うし何も知らないことだらけだからどうしても気になってしまう。
彼に恋人はいるのか、そもそも好きな人はいるのかも分からないし。
「そんなやつより私は凛くんの方が何千倍もいいな〜」
日当たりのいい窓側の席に座っている一人の生徒。
彼の名前を知らない方が珍しいくらい糸師くんは名が知れた生徒でその圧倒的な容姿から女子たちの人気が高かった。
私みたいなのが言っていいのかわからないけど、私はそんなにかっこいいとは思わないし、あまり魅力を感じない。
だっていつも不機嫌っていうか近寄り難いし、にこりともしないんだもの。
そういえばAくんと一緒にいるところ見るけど仲いいのかな。
「……糸師くんってAくんと仲良いの?」
「そうなの?つーかそんなの本人に聞きなよ」
「だよね。そうする」
「え、ちょ、今の冗談___」
何か言いかけていたような気がするけど無視した。
それくらいAくんのことが知りたかった。
誰だって好きな人の個人情報は知っておきたいでしょ。
「糸師くん、ちょっといい?」
確かに顔はいい。
睫毛が長くて肌が真っ白で髪もさらさらだし。
でもやっぱり愛想は悪い。
顔をこっちに向けただけで何も言わない。
「Aくんと仲良いよね?Aくんって彼女いるの?」
「あ?」
ちょっと悪態をつかれて怖かったけど、まあ普段話さないやつから他人の恋愛事情聞かれたらそうなるよね。
「……いる」
色々聞きたいことはあった。
いるっていうショックの方が大きくて頭が真っ白になった。
ここで私の甘酸っぱく淡い恋は儚くも幕を閉じた。
「その様子じゃ彼女いたみたいだね。どんまい」
「告る」
「は?」
「彼女いようがいまいがAくんに好きってことは伝えたい。ダメ元だけど玉砕覚悟で」
「えぇ……」
何てったって華の女子高生だし青春しなきゃ勿体ないでしょ。
それにAくんのことが好きで好きでたまらないんだから仕方ない。うん。
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モヨモヨ(プロフ) - 簡潔おめでとうございます!!!マジですきだ!!きまさんの文でしか得られない栄養が、ある。言葉選びが毎度素敵だし、なにより表現のしかたがドストライクすぎる。すき 小説を書いてくれてありがとう。きまさんも小説も大好きだ……更新お疲れ様でした! (1月3日 1時) (レス) @page48 id: 3d85c557d8 (このIDを非表示/違反報告)
コン(プロフ) - 初コメ失礼します!完結おめでとうございます!!主人公と凛ちゃんの関係の移り変わり方が好きすぎて何回も読み返しました。ずっとドキドキしながら読んでいました!本当に大好きな作品です!完結したのは正直悲しいですが素敵な作品をありがとうございました!! (12月31日 20時) (レス) id: 367d94bba3 (このIDを非表示/違反報告)
にんじゅん(プロフ) - はじめまして、初めてコメントします。貴方様の書く凛と男主の関係性がものすごく大好きです。男主くんの掴めそうで掴めない距離感のもどかしさだったり、凛のほろ苦い心情が読んでいて「はぁ〜っ……!」とキュンとします。これからも続きを楽しみにしております。 (6月30日 22時) (レス) id: 9723d369eb (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - リアムさん» コメントありがとうございます!個人的に凛ちゃんさんを書くの苦手なので続きが気になる展開にできて嬉しゅうございます!ぶっ倒れない程度に更新頑張ります!! (6月18日 19時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
リアム(プロフ) - 凛!一体どうしたんだ〜!続きが気になるので、楽しみにしています!無理のない範囲で更新頑張ってください! (6月17日 9時) (レス) @page32 id: 5aa1bb0c09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年4月12日 22時