137話 断固拒否 ページ22
凛の手からテスト用紙を受け取ると、意気揚々としながら折りたたまれた紙を開く。
一枚目は英語。
言わずもがな満点の英語のテストにはAも頭が上がらない。
高得点は取れるが得意というわけではないので、素直に感嘆のため息を吐く。
「やっぱ英語はできた方がいいよなー。今度教えてよ」
「気が向いたらな」
問題はここからだ。
小テストでそれなりに得点を取っていたとしても、それとこれとでは訳が違う。
前より飲み込みが良くなったとはいえ、付きっきりで教えていたわけではないし途端に手汗が滲んだ。
あの高得点に満足してまた点数が見るも無惨な頃に戻っていたら、と不安が襲いかかる。
「マジかよお前……」
絞り出すように出た声は掠れていて、凛の顔とテスト用紙を交互に見ていた。
開いた口が塞がらず死にかけの魚のようにハクハクと口を動かし目が零れそうなほど見開いている。
当の本人は困惑している様子のAに冷ややかな視線を向けていた。
「うぜえ」
「だって……71点だよ!!こんないい点……どしよ、泣きそう……」
呻いてテーブルの上に突っ伏したAの肩は微かに震えていて本当に泣いているのかと思い、凛は若干座っている間隔をあけた。
見てるこちらが恥ずかしくなるような有り様に段々といたたまれなくなって肩を強めに叩き、話しかける。
「そういうお前はどうだったんだよ」
顔を伏せたまま一枚の紙を凛に差し出す。
中身を見ればAの得意科目の数学で点数はいつものように高く、96点だった。
「172と171……」
恐らくこの三桁の数字は合計点だろう。
僅かな点差に凛は舌打ちした。
「やったー!!俺の勝ち!!一点差が複雑だけど!!」
先程の沈んだ様子とは打って変わって勝ち誇る。
調子の良すぎる態度に最早馬鹿らしく感じられ、呆れてきた。
「りーん」
呼ばれた方へ振り向けば、指で頬をつつかれる。
憎たらしいほどしたり顔で笑っているAの顔が真っ先に目に入り、唇が弧を描いた。
「ずっと友達でいてね」
悪戯っぽく湛えたその笑みの奥に一瞬、苦しそうな何かに耐えるような、そんな含みが見えた。
凛が口を開く前にAが言葉を紡ぐ。
「負けた方はなんでも言うこと聞くって話だったじゃん?」
「ふざけてんのかお前」
「ふざけてねえよ!今日からパシリな〜よりはマシだろ!」
「お前をダチだと思ったことはない」
「ぶっ殺す!!」
鼓膜を破る勢いで騒ぐAに一つ、凛は額に指を弾かせた。
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モヨモヨ(プロフ) - 簡潔おめでとうございます!!!マジですきだ!!きまさんの文でしか得られない栄養が、ある。言葉選びが毎度素敵だし、なにより表現のしかたがドストライクすぎる。すき 小説を書いてくれてありがとう。きまさんも小説も大好きだ……更新お疲れ様でした! (1月3日 1時) (レス) @page48 id: 3d85c557d8 (このIDを非表示/違反報告)
コン(プロフ) - 初コメ失礼します!完結おめでとうございます!!主人公と凛ちゃんの関係の移り変わり方が好きすぎて何回も読み返しました。ずっとドキドキしながら読んでいました!本当に大好きな作品です!完結したのは正直悲しいですが素敵な作品をありがとうございました!! (12月31日 20時) (レス) id: 367d94bba3 (このIDを非表示/違反報告)
にんじゅん(プロフ) - はじめまして、初めてコメントします。貴方様の書く凛と男主の関係性がものすごく大好きです。男主くんの掴めそうで掴めない距離感のもどかしさだったり、凛のほろ苦い心情が読んでいて「はぁ〜っ……!」とキュンとします。これからも続きを楽しみにしております。 (6月30日 22時) (レス) id: 9723d369eb (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - リアムさん» コメントありがとうございます!個人的に凛ちゃんさんを書くの苦手なので続きが気になる展開にできて嬉しゅうございます!ぶっ倒れない程度に更新頑張ります!! (6月18日 19時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
リアム(プロフ) - 凛!一体どうしたんだ〜!続きが気になるので、楽しみにしています!無理のない範囲で更新頑張ってください! (6月17日 9時) (レス) @page32 id: 5aa1bb0c09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年4月12日 22時