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130話 ん? ページ15

雨で冷えた体を湯に沈める。

少し熱めの湯だったせいか、足先がビリビリと痺れた。

風呂場の窓からはまだ雨音が聞こえる。

湯船に鼻先がつくほど浸かると、帰りのことを思い出した。

「押し倒して襲うとは……」

今更になって凛の爆弾並の発言を一人呟いた。

実のところ、質問の内容が内容なこともあって脳が自然と聞き流すことに意識を研ぎ澄ませていたせいでよく聞いていなかったのだ。

その後、焦る様子もなく滔々と述べた凛にいつもと変わらぬ調子で話してしまったが、それはそれでまずいのではないのだろうか。

しかもなんだよ。
なにが「そうだよね、そうしてみる……」だ。

話を聞け、話を。
参考にできるとこなんもねえよ。

なに賛同しちゃってんだよ。
アホなの?

あの流れと凛の性格からして冗談とは到底思えない。

それならば何故あのようなことを言ったのか。

凛に直接聞かない限りこの理由は藪の中だろう。

いやそもそも聞けるわけがない。

互いに気まずくなるだけだ。
ここは黙っておくのが賢明な判断だ。

(なんか、行きたくねえな)

髪から滴り落ちた雫が水面に波紋を作る。

行きたくない、と一口に言っても学校に行きづらいというわけではなく毎週土曜日に控えている塾が問題なのだ。

理由は言わずもがなである。

脳髄まで染み渡るほど濃く記憶に残っているあの日の夜を思い出し、ため息を吐いた。

さて、どうしたものか。

足りない頭で考えても出るのは苦悶に悩む唸り声だけであとは他にない。

湯船で思いきり息を吐いて泡を立てる。

肺の中の空気を全て出し切る前に勢いよく息を吐いたせいか、鼻腔に温かい湯が直撃した。

鼻の奥と喉にツンとした痛みが広がる。

「もうちょいでテストか〜。凛大丈夫かな……」

近々、定期試験があることを一人呑気に虚しく濡れたフローリングに呟いた。

悩みの種の一つである凛の名前を口にする。

(でも小テストの点数よかったし前みたいに付きっきりじゃなくても平気かな)

返却された自分の小テストの点数を思い出し、また落胆した。

嫌なことを思い出すとキリがない。

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モヨモヨ(プロフ) - 簡潔おめでとうございます!!!マジですきだ!!きまさんの文でしか得られない栄養が、ある。言葉選びが毎度素敵だし、なにより表現のしかたがドストライクすぎる。すき 小説を書いてくれてありがとう。きまさんも小説も大好きだ……更新お疲れ様でした! (1月3日 1時) (レス) @page48 id: 3d85c557d8 (このIDを非表示/違反報告)
コン(プロフ) - 初コメ失礼します!完結おめでとうございます!!主人公と凛ちゃんの関係の移り変わり方が好きすぎて何回も読み返しました。ずっとドキドキしながら読んでいました!本当に大好きな作品です!完結したのは正直悲しいですが素敵な作品をありがとうございました!! (12月31日 20時) (レス) id: 367d94bba3 (このIDを非表示/違反報告)
にんじゅん(プロフ) - はじめまして、初めてコメントします。貴方様の書く凛と男主の関係性がものすごく大好きです。男主くんの掴めそうで掴めない距離感のもどかしさだったり、凛のほろ苦い心情が読んでいて「はぁ〜っ……!」とキュンとします。これからも続きを楽しみにしております。 (6月30日 22時) (レス) id: 9723d369eb (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - リアムさん» コメントありがとうございます!個人的に凛ちゃんさんを書くの苦手なので続きが気になる展開にできて嬉しゅうございます!ぶっ倒れない程度に更新頑張ります!! (6月18日 19時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
リアム(プロフ) - 凛!一体どうしたんだ〜!続きが気になるので、楽しみにしています!無理のない範囲で更新頑張ってください! (6月17日 9時) (レス) @page32 id: 5aa1bb0c09 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年4月12日 22時

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