112話 ある友人だった者の悔悟 ページ43
ある日、そいつは突然来た。
コーチのスカウトだとかで。
まだ幼さが残る人当たりの良さそうな笑みを浮かべていたのを覚えている。
そいつは真っ先に俺のところへ駆け寄ってきて、
「真宮柊斗だよな!?テレビの特集で見た!!俺、めっちゃお前のプレー好きなの!!」
そいつは___AAは言った。
俺と一緒にボルダリングができるのが嬉しいのだと。
透き通るような真っ直ぐな視線とその言葉が本当に本当に嬉しかった。
誰だって人から尊敬される対象にされたら嬉しいだろ。
Aはあっという間に力をつけた。
元々あいつにはとんでもない才能と実力があった。
誰もがAを羨み、慕った。
俺は非公式のコンペでも上位にすら食い込むことができず、常に一位をもぎ取るAの背中を見ることが増えた。
無名だったにも関わらず、Aの名は瞬く間に広まった。
この中で一番のやつは誰か?
そう問われれば全員が口を揃えてAAだと答える。
「Aやべーよな、ぶっちぎりじゃん」
「またスカウト来てたらしいぜ。今年のユースA確定だろ」
「もう逆に怖いわ……。でも、真宮もエグいべ」
「……なんつーかさあ、Aがすごすぎて霞むっつーか、大したことないっつーか」
「あー、それは言えてる」
更衣室のある会話。
俺はAと比較される格下の対象に成り下がっていた。
ユース選抜だって近いのにまともな功績すら残せていない俺に何の取り柄があるというのか。
「真宮、お疲れさまー!!」
普段なら嬉しいその所作も切羽詰まった俺にとって憎たらしい以外他ない。
「お前もな」
「真宮ちょーすごかった!!お前天才だよ!!」
天才___
そう言われた俺はAが本心からそう言っているのを頭で理解しているのに嫌味にしか聞こえなかった。
「Aさ、鉾田のサークルからスカウト来たんだろ。なんで断ったんだよ。有名じゃん。こんな弱小チームより」
苛立って吐いた言葉は消せるはずがなく、口走った。
「弱小チームなんかじゃねえよ?」
「は?」
「だって真宮がいんじゃん!俺、優勝とかどうでいいし、真宮と一緒にボルダリングできたらそれで十分だもん」
誰のおかげだって?
勝敗なんかどうでもいい?
俺とボルダリングができたらそれでいい?
俺は気が気でなかった。
無邪気に笑うAが許せなかった。
勝敗なんてどうでもいいんだろ?
だったら俺に譲れ___
「A、ビレイしてほしいんだけど」
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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!潤くん気に入ってもらえて嬉しいです笑足りない頭で考えてるのでそう言ってもらえて光栄です😭これからも凛ちゃん可愛くできるように頑張ります👍 (5月21日 16時) (レス) id: 8a8d84916b (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - 潤面白すぎる笑笑な○卯ってwwww語彙力高すぎてマジ尊敬します!凛がかわいい笑 (5月15日 23時) (レス) @page25 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - あいにゃさん» コメントありがとうございます!きゃー!!意味検索してくださって嬉しいです😭💞どれにするかめちゃくちゃ迷ってたのですがマカロンにしてよかった…😌💞 (2023年4月18日 11時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃ(プロフ) - マカロンの意味調べた瞬間合掌しました……尊い (2023年4月17日 10時) (レス) @page12 id: 81a8b41ab6 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 空さん» コメントありがとうございます!うぎぇ!!解釈一致いただきました😭玲王くんはどれだけ愛が重くてもいいと思って好き勝手やっちゃってるので解釈違いだったらどうしようと心配でしたが刺さったようで嬉しいです💞玲王くん重くできるよう頑張ります笑 (2023年4月9日 17時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年3月6日 18時