89話 コーヒーとカフェラテ ページ20
食事も済み、嫌がる凛を無理矢理連れ回せば時刻もあっという間に過ぎて、休憩がてらバスが来るまで大広場で待つ。
やはり雰囲気が煌びやかなせいかカップルや子連れが多い。
真宮と会ってからAの気分が晴れることはなく、むしろため息ばかりを吐いた。
「ん」
頬に温かな感触が伝わる。
温かな感触がした方に目を向ければ、凛がタンブラーを差し出していて、挽きたてのコーヒーの芳醇な香りがした。
「え、うそ!これ俺の!?」
「要らねえなら頭からぶっかける」
「要るわ。ありがと〜。金返すよ、なんぼだった?」
「奢り」
「いいの?マジでいいの?」
「しつけえよ。いいつってんだろ」
凛にしては寛大すぎる対応に驚きつつも、タンブラーに口をつける。
中身はほろ苦いコーヒーと優しいミルクの味が混ざった少し熱めのカフェラテで砂糖が入っていない無糖だった。
「凛は何にしたの?」
「コーヒー」
「えー、俺もコーヒーがよかったー」
「殺されてえのか」
「ジャストキディングでございます」
カフェラテが丁度いい温度に下がるまでしばらく手に持ってそろそろかとぼんやりしながら再び口にしようとすると、凛がおもむろに口を開く。
「お前のことクズ呼ばわりしてたやつ、誰」
案の定、思い切り噎せ返る。
それを見た凛は露骨に嫌な顔をした。
「ちょっ、おま、どっからきいてたの!!」
「さあな」
「さあな、じゃなくてさあ……」
気管に入ったカフェラテが出るまで小さく咳き込んで呼吸を整える。
普通に話せるまでに落ち着くと一息ついてぽつりと話し出した。
「あいつね、真宮っていうんだけど中学のとき所属してたクラブが一緒だったんだ」
「クラブ?」
「うん。もうやめたけどスポーツやってたんだ。ボルダリングっていうだけど……知らねえか」
「ヤモリみてえに壁登るやつか」
「言い方よ……」
普段なら他人に興味を示さないくせに珍しく食いついてきた凛にAは饒舌になる。
凛の目線が自分の足に向けられていることに気づき、凛が何か誤解しているのを感じたAは慌てて否定した。
「違う違う!怪我でやめたとかじゃなくて!確かに俺の足ボロボロだけど……」
以前見たAの足の痣や細かな傷は練習からきたものだと凛は自己解釈する。
「じゃあ何でやめたんだよ」
Aは気まずそうに俯いた。
紙のタンブラーが僅かに変形する。
触れてはいけないと頭ではわかっているが、やはり気になる。
Aの乾いた唇が動いた。
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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!潤くん気に入ってもらえて嬉しいです笑足りない頭で考えてるのでそう言ってもらえて光栄です😭これからも凛ちゃん可愛くできるように頑張ります👍 (5月21日 16時) (レス) id: 8a8d84916b (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - 潤面白すぎる笑笑な○卯ってwwww語彙力高すぎてマジ尊敬します!凛がかわいい笑 (5月15日 23時) (レス) @page25 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - あいにゃさん» コメントありがとうございます!きゃー!!意味検索してくださって嬉しいです😭💞どれにするかめちゃくちゃ迷ってたのですがマカロンにしてよかった…😌💞 (2023年4月18日 11時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃ(プロフ) - マカロンの意味調べた瞬間合掌しました……尊い (2023年4月17日 10時) (レス) @page12 id: 81a8b41ab6 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 空さん» コメントありがとうございます!うぎぇ!!解釈一致いただきました😭玲王くんはどれだけ愛が重くてもいいと思って好き勝手やっちゃってるので解釈違いだったらどうしようと心配でしたが刺さったようで嬉しいです💞玲王くん重くできるよう頑張ります笑 (2023年4月9日 17時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年3月6日 18時