88話 ヘンなの ページ19
もう一つのコップに注ごうとした手が止まる。
横を見ると、知り合いにいたような顔つきをした男が一人、こちらを見ていた。
その男に当てはまるであろう名前を口にする。
「真宮?」
「そーそー。元気?」
「まあまあ、かな」
「なんだよそれ〜」
真宮とは中学以来会っていない。
友人といっても彼とはそんなに親しい仲ではない。
それどころか不仲といった表現をする方がしっくりくる。
真宮もそれがわかっているはずなのに、わざわざ話しかけてくるあたり、たちが悪い。
「お前も元気そうでよかったよ」
気まずさを押し殺して当たり障りのないテンプレートな言葉を使う。
呑気にいられる真宮の神経を疑っていると、ところで、と真宮が話を切り出した。
「お前も練習しにきたの?」
「は……?」
話を理解しきれていないAを無視して真宮は続ける。
「いやだって、ここジム近いし___」
話に置いていかれているAを見て真宮はようやっと気づいたのか、分が悪そうに口元を手で覆う。
指の隙間から口角が上がっているのをAは見逃さなかった。
「あー、そうだった。お前やめたんだもんな。悪い悪い!ほら、この時間帯バカみたいにやってたもんだからさ、お前」
これほどまで露骨にわざとらしい発言をされ不愉快だった。
Aでなくても頭の弱い馬鹿にだって嫌味を言われているのがわかる。
一定のリズムで肩を叩く手を今すぐ払い除けたかった。
「……言ってなかったっけ」
「わかんね。そういえば一人?」
「いや。友達と一緒」
「ふーん……。お前みたいなクズにもツルむ相手いんだな」
「そりゃね」
何が言いたいんだこいつ。
反りが合わないやつに絡んで何が楽しいんだ。
どちらかといえば怒りの沸点は低い方だと思う。
平然を装うのがそろそろ限界に近づいてきた頃、背後に圧を感じた。
「あれ、凛?どしたの?」
不自然に声が裏返る。
いつもなら驚いたり何なりとくだらない茶番を繰り広げるが、今回ばかりは心底安心して凛に目を向けた。
手ぶらの状態の凛を不思議に思い、尋ねる。
「もう飯取りに行き終わったん?」
「迷った」
「え」
確かに昼時で人は多いが、大の高校生が迷うほどではない。
だが、ここから立ち去るには丁度いい理由ができたので都合がよかった。
「迷ったって……。じゃあ今から取りに行こ、ついてってやるから」
じゃあね、と一言真宮に声をかけるとその場をあとにした。
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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!潤くん気に入ってもらえて嬉しいです笑足りない頭で考えてるのでそう言ってもらえて光栄です😭これからも凛ちゃん可愛くできるように頑張ります👍 (5月21日 16時) (レス) id: 8a8d84916b (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - 潤面白すぎる笑笑な○卯ってwwww語彙力高すぎてマジ尊敬します!凛がかわいい笑 (5月15日 23時) (レス) @page25 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - あいにゃさん» コメントありがとうございます!きゃー!!意味検索してくださって嬉しいです😭💞どれにするかめちゃくちゃ迷ってたのですがマカロンにしてよかった…😌💞 (2023年4月18日 11時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃ(プロフ) - マカロンの意味調べた瞬間合掌しました……尊い (2023年4月17日 10時) (レス) @page12 id: 81a8b41ab6 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 空さん» コメントありがとうございます!うぎぇ!!解釈一致いただきました😭玲王くんはどれだけ愛が重くてもいいと思って好き勝手やっちゃってるので解釈違いだったらどうしようと心配でしたが刺さったようで嬉しいです💞玲王くん重くできるよう頑張ります笑 (2023年4月9日 17時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年3月6日 18時