糸師凛、勉強はレッドカード【3】

81話 星座占い ページ11

塾の授業の休憩時間。

特にすることがなく現代人らしくスマホに首ったけになる。

毎時間、あたり前のように隣に座っている玲王もスマホに視線を落としていた。

たまに他愛もない一言くらいの会話をする程度でそれ以外は互いに話すことなく貴重な休憩時間が過ぎていく。

用があろうがなかろうがいつも通り隣にいる玲王にわざわざ一年生教室まで来て、これといって話すことがないのに時間ギリギリまでいるのは面倒ではないのかと今更ながらAは思った。

かといって休憩時間に玲王がいることが普通になってしまったせいか、いなかったらいなかったで寂しい。

「ねえ、玲王」

「んー？」

「玲王って何座？」

「え、いきなりなんだよ……」

「いいから！何座なの？」

質問の意図が見えず、玲王は困惑する。

とりあえずAの質問に玲王は答えた。

「しし座だけど……」

Aはしたり顔で笑う。

よからぬことが起こりそうな予感はするが、ますますAが何をしたいのかわからなくなり、思わず身構えた。

「残念！今日しし座は十二位。最下位おつ〜」

「なんなのお前」

「星座占いだよ。これ結構当たるって有名なの。今日のしし座恋愛運ひどいよ。人に期待しすぎは禁物だって」

どうでもいいことで一人盛り上がっているAに呆れ、見せるために近づけてきたスマホの画面に視線を落とす。

「ふーん。Aってこういうの好きなの？」

「いや全然」

Aは興味なさげに即答した。

確かにAはわざわざ毎日星座占いを確認して一喜一憂する人間ではない。

「俺、好きじゃないんだよね。最下位の星座の言い方」

「最下位の星座の言い方？」

今日はやけに饒舌だと思いつつ、Aが呟いた意味不明な言葉を復唱した。

玲王のスマホの画面が薄暗くなる。

「ほら、『今日の最下位はごめんなさい、何々座のあなたです』って言うじゃん？そのごめんなさいが気に入らないんだよ」

聞き返さなければよかったと後悔するくらい下らない内容だった。

だが本人は至って真剣に考えていてさながら哲学者である。

「じゃあなんだったらいいんだよ、逆に」

「ちくしょう、とか……？」

「コ○メ太夫？」

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