44話 髪が流れたから ページ10
凛はAの話を半分聞いて、半分聞いていない。
理解したフリをして頷いて、説明しろと言われ、全く理解できていないことに気づかれて文句を垂れられる。
そもそもこんなリラックスするようなカフェで勉強なんてできない。
「もっかい説明すっから。これで説明すんの最後ね。あとはもう知らん」
呆れ気味にAはそう言って呪文のような言葉をとめどなく言っていく。
よくもまあそんな風に次から次へと言葉が出てくるものだ。
凛は横目にAを見る。
テーブルの上のテストに視線を落としているせいか、目が伏し目がちになって少し短めの睫毛がよく見えた。
Aの細い髪が顔を隠すように垂れる。
Aは気にせず、テストの問題を解き直している。
特に他意はない。
ただ、髪が邪魔そうだと思っただけ。
凛は自然とAの髪に手が伸びて、肉の薄い耳に垂れた髪をかけた。
触れられた違和感にAは驚いたのか、ゆっくりと凛の方を向く。
Aは何をされたのかまだわかっていないのか、ぽかんとした顔でいわゆるアホ面を晒した。
「……」
「……」
何も言わず、数秒間、お互いの顔を見合わせる。
「どうした?」
幼子と目線を合わせて話しかけるようなそんな優しい声を発してAは凛に尋ねた。
そしてもう一度、耳に髪をかける。
普段のAからは想像できない落ち着いたその艷っぽい雰囲気に心臓のあたりがきつく締め付けられた。
凛は吃り気味に喉を震わす。
「髪が、邪魔だったから」
「そっかそっか」
Aはふんわりと微笑む。
だが、何か思うところがあったのかAは一変して眉を顰め、不機嫌を露わにした。
「人の髪触ってる暇あんなら話聞け馬鹿!!スターゲイジーパイ食わせるぞ!!」
仕返しにAは凛の絹のような黒髪をわし掴んで、上に上げる。
肌荒れを知らずの綺麗な白い額が見え、その姿は冴と瓜二つだった。
「ほーら冴さんそっくり!!あっ、ちょ!!こめかみは反則だろ!!」
凛はさらに力を強めた。
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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます!新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです!モブ夫の活躍に乞うご期待ですね! (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした!笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます!玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます!! (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年2月9日 18時