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43話 カフェにて ページ9

「う、うぅ……」

Aは呻き声を上げていた。

近くには何枚かの紙が散らばっている。

凛は先程頼んだコーヒーを一口飲んで、テーブルに突っ伏したAを見る。

「すごいね……赤点ないよ……。信じらんない………」

「あっそ」

凛は平然としていたが、満更でもない様子だった。

その様子を見たAは勢いよく起き上がる。

「もっと喜べよ〜。素直じゃねえな。数学18点から64点はすごいよ」

隣に座っている凛を肘で小突くと、凛は鬱陶しげに払い除けた。

再び凛の添削済みの数学のテストを手に取って、まじまじと見る。

「安心したよ」

「何が」

「頭のいい俺が教えたのに赤点取ってたらどうしようってずっと考えてて寝れなかったんだ」

「死ね」

Aは苦笑する。

テストが返却されるまでの間、凛に会うことはなかった。

放課後に凛と勉強することに慣れてしまったせいか、いつもの日常が味気なく寂しく思えた。

だからこうして、また会えていることが嬉しかった。

怯えながら凛に勉強を教えていた頃が懐かしい。

ほぼ一問一答のような会話はやっと友人らしい会話になったし、冗談を言えるくらいになった。

その頃の自分が今のAを見たら泡を吹いて卒倒するだろうなと馬鹿な想像をする。

「お前って何でたまにニヤけんの。変態かよ」

「……笑うことはいいことですよ、凛くん」

ただし、生意気なのは変わらない。

「じゃあ、解き直しやろっか」

凛は「なぜ」と言わんばかりにAの顔を見る。

面倒くさいテスト勉強がようやく終わったのに、なぜまたテストの解き直しなどしなければならないのか、反発に近い疑問を抱いているだろうがAは無視してペンケースを取り出した。

「お前は、どうだったんだよ」

「え〜。それ聞いちゃう?」

にやりと不敵な笑みを浮かべるその姿に苛立ちを覚える。

Aが勉強ができることくらい知っているが、その余裕がかえって苛立ちをさらに誘った。

「別にいいだろ。そんくらい」

「あら、そう?どの教科から聞きたい?」

「……数学」

「100点」

間を取らずに即答するあたり、性格の悪さが滲み出ている。

凛は苦虫を噛み潰したような顔をしたが、粗探しするかのように次から次へと教科を言う。

「物理」

「100点」

「国語」

「100点」

「生物」

「100点」

何だコイツ。四連続で100点ってなんなんだよ。

ため息を吐く凛にAは哀れみの目を向けた。

「自分で聞いて虚しくなんねえの?」

「黙れ」

44話 髪が流れたから→←42話 ある生徒の独り言



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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます!新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです!モブ夫の活躍に乞うご期待ですね! (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした!笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます!玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます!! (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年2月9日 18時

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