糸師凛、勉強はレッドカード【2】

72話 凪をさがせ！ ページ45

玲王と二手に分かれ、学校内を探し回る。

「凪さーん？」

呼んでも返事はない。

こんなに人だかりができている中で名前を呼んでも消え入るだけである。

玲王の焦りようからしてどれだけ凪を大切に思っているかが窺える。

自分の宝物だと何の躊躇いもなく言うほどであるし、それはAも知っているのだが、友人に向ける感情とは少し違う気がするのだ。

玲王が話す凪の話を聞いて、普通ここまでやるものなのか？と違和感を覚えることが多々あった。

何で見たかは覚えていないが、中高生くらいの年頃になると依存先を自身の親から友人や恋人に乗り換えるらしい。

まるで玲王のことを言っているようだ。

Aの脳裏にある一つの考えが浮かぶ。


(もしかして玲王は凪さんのことがそーゆー意味で好き……！？)


傍から見れば、二人はさながら恋人のようである。

何に対しても無気力な彼に甲斐甲斐しく世話を焼く彼女と同じだ。

(私がいないと本当ダメね〜的な……！？)

こんなおかしな妄想をする自分は多分疲れている。

そのせいか自然とため息を吐いた。

Aは校舎裏へと行く。

これで見つからなかったら一旦、玲王に連絡しよう。

人気がなく、日射しより影がほとんどを占める校舎裏は肌の露出が多い服を着ているAにとって少し肌寒かった。

「あら、死んだ」

聞いた覚えはないのになぜかよく知っている声が聞こえた。

画面をタップして操作する音と軽快なBGMも聞こえてくる。


「「あ」」


覗くように壁から頭を出せば声の主と目が合い、長いようで短い沈黙が流れた。

少し乱れた猫っ毛の白髪、呆然と気怠げな溶け込むような漆黒の双眸はいつか聞いた誰かにそっくりで。

さも知り合いかのように互いの名前を口にする。

「凪さん……」
「Aだ」

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