71話 忘れてた ページ43
学校内を未だ履き慣れないハイヒールで練り歩き、たまに友人に馬鹿にされるのを繰り返したせいかAは憔悴しきっていた。
昼時ということもあってか追い討ちをかけるように人はさらに増え、Aに向けられる視線はさらに多く鋭く痛くなる。
そろそろいい頃合いかと思い、足を進めると髪にあった重みが重力に従って床に落ちた。
髪に触れるとあったはずのパンダのヘアピンがない。
床に落ちたヘアピンを拾うために屈んで、手に取る。
「A……?」
それと同時に頭上から声が降ってくる。
騒がしい中、その声は鮮明に聞こえた。
名前を呼ばれ反射的に顔を上げると、なぜか玲王がこちらを見ている。
そういえば、入場券渡したよな。
おいでって俺から言ったんだっけ。
玲王は少し面食らったように目を丸くして、頭のてっぺんからつま先までじっくりと見られ、顔が焼けるように熱くなる。
「どんなお前でも俺は味方だからな……」
「違うんだって!!これにはわけがあってですね!?無理矢理っていうかなんていうか……。ねえ撮るのやめて!?」
さりげなく写真を撮られ、顔が赤くなるどころか嫌な汗まで滲んできた。
玲王は笑わまいと口元を押さえて吹き出すのを必死に堪えている。
指の隙間からはたまに抜けた空気と小さな引き笑いが漏れていた。
もういっそ腹を抱えて大笑いされた方が清々しい。
「○ーさんッ……どう、したんだよ……」
「これは他クラスの衣装なの。無理矢理手伝わされてんの。プ○さんとは別」
「そっかぁ……」
そう小さく呟くと玲王はやっと顔を上げ、Aを見た。
ブフッ、と吹き出す音がいやに近くで聞こえた。
562人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます!新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです!モブ夫の活躍に乞うご期待ですね! (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした!笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます!玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます!! (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年2月9日 18時