63話 気づいてましたよ、最初から ページ34
そうだ、とAは続ける。
「ミルクじゃなくてビターなのセンスいいね。俺がビター好きなの知ってたの?」
「……は?」
思わず立ち止まった凛はあっけらかんとして少し前を歩くAの背中を見つめた。
そして、Aの言った言葉の意味がわかると同時にAは一目散に走り出す。
凛も瞬時に反応して追いかける。
「おい待て!!」
「やだよ!!絶対殺される!!」
愉快そうに笑いながらAは走る。
自分を追いかける凛をちらりと見ると、今まで見たことないくらい真っ赤だった。
「あー待ってしぬ!笑い死ぬわこんなん!」
観念したかのようにAは走るのをやめて腹を抱えて笑いだした。
いつものようにこめかみを掴まれるかと思ったが羞恥心が勝っているのか、凛はただAを睨みつけて行き場のない手を固く握りしめている。
「いつから、気づいて……」
震える声で話すその姿は小さい子供のようであの凛が羞恥心に為す術なく固まっているのを見てさらに笑いが込み上げてきたが、吹き出さないようAは話す。
「気づいてましたよ、最初から」
「殺す」
「自分から渡しといてなに言ってんのさ!おっかしーの!!」
凛を通してAに渡されたいつかのバレンタインのチョコレート。
凛が言うには差出人不明の女子からのもの。
最初に凛からそれを渡されたとき、すぐに凛からのチョコレートだと確信した。
渡したときの凛の表情はどこかよそよそしかったからだ。
このときはまだ半信半疑で潤から凛の話を聞いても適当に流していたが、後々になって思い返してみると辻褄が合ったので確信に変わったのだ。
凛のこの反応もその一つだ。
Aは凛の反応が面白くて仕方なかった。
あのチョコレートを渡す仕草と言い分はいかにも人と接し慣れていない様子で、不器用ながらも渡そうとする健気な姿は本当に凛なのかと疑いたくなるほど。
男相手に言うのもおかしいかもしれないが、とても可愛らしかったのだ。
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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます!新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです!モブ夫の活躍に乞うご期待ですね! (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした!笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます!玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます!! (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年2月9日 18時