62話 ご愁傷さま ページ33
ついに勝負の二日目。
ボッチャの会場である格技場は盛り上がりを見せている他の競技より静かだった。
Aはボールを目の前に構える。
今持っているボールが最後の一つで、これで勝敗が決まる。
狙いを定めて重しが入ったボールを投げる。
ボールは中心を示した場所へ転がり、高得点を陣取った。
絶対的な勝利を確信したAは思わず同じチームの友人にほら見ろと言わんばかりの視線を向ける。
だが、Aが投げたボールは相手チームに弾き出され虚しくも遠くへ転がっていった。
どうやらぬか喜びだったらしい。
これにて、Aの球技大会は惨敗に終わった。
格技場を出て、何となく歩いていると糸師くんかっこよかったね、と楽しげな女子の話し声が聞こえた。
その声は生徒玄関側から聞こえたので、おそらく外でやる球技といったらサッカーとドッヂボールしかない。
凛のことだからきっとサッカーだろう。
終わったのなら様子でも見に行こうかと玄関へ足を進めた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
砂埃が舞う中、目を細めながらAはサッカー会場である場所へ歩いていく。
砂で霞がかった視界に一つだけすらりと飛び抜けて細いシルエットが映った。
「りーん」
「……何だ、お前か」
「はい。お前ことAAくんでーす。で、試合どうだった？」
上機嫌に尋ねれば凛は流し目で後ろ見た。
Aも凛の後ろを見ると肩で息をしている生徒がちらほら。対して凛は息が切れていないどころか汗すら流していない。
ですよね。
一目瞭然ですよね。無双状態ですよね。
「お疲れ様です……」
「素人相手にクソもへったくれもねえよ」
「凛じゃなくて他の人たちに対してだよ」
並んで歩き、校舎に戻る。
以前、潤が洋菓子店で凛を見かけたと言っていたのを思い出し、丁度いい機会だと思い凛に尋ねる。
「聞きたいことあんだけどさ、凛って彼女いんの？」
「は？いるわけねえだろ、そんなの」
切れ味のある言葉にAは安堵した。
凛に彼女がいたらいたでそれは結構腹が立つ。
そんなこと口が裂けても言えないが。
「だよね！」
「……何で、そんなこと聞くんだよ」
「いやあね、この前俺のダチが菓子店で凛見かけたから彼女いるんじゃねーのって言ってたもんですから」
「くだらねえ」
「すんごい無頓着」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 562人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます！彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (
レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます！新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです！モブ夫の活躍に乞うご期待ですね！ (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした！笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます！玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます！！ (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：殺痲(キルマ) | 作成日時：2023年2月9日 18時
