52話 いてっ ページ22
「ラッグの脚に靴紐引っかかってる。取って」
「お前がいるから動けない」
「じゃあ絵の具取ってくんない?」
「どれ」
「それ。緑のやつ」
長い腕を伸ばし絵の具を手に取るとAに渡すが、またもやあと少しのところで届かない。
「ねえそれわざと!?届かないんだけど!!」
「ここまでしか動けねえんだよ」
「だぁぁぁぁ!!!!」
「うるせえ」
Aは声を荒らげる。
ほぼ密着状態のせいかAのうるさい声が凛の鼓膜を突き抜ける。
指先がやっと触れたかと思えば、横から軋む音がした。
そういえば、足が軽くなったような気がする。
「「あ」」
__________
ガタン、と嫌な音を立ててラッグは崩れ落ちた。
幸いにもラッグはAたちの方には倒れなかった。
床はラッグにあった絵の具や筆、その他諸々で散らかっている。
だが、Aはやってしまったと絶望するより、後片付けのことを考えるより、今の状況に理解が追いついていなかった。
ラックが倒れたと同時にAは凛の方へ倒れた。
視界が一気に下に向いて唇に柔らかいものが触れ、ガチンと刺すような痛みが口の中で弾けた。
そして、Aを見つめる青空のような双眸。
脳が離れろと危険信号を出す。
ゆっくりと凛から離れると舞って光に照らされた埃の他に透明な糸が引いた。
口の中で感じたあの痛みは歯がぶつかったからか。
「あ、え、ご、ごめっ……」
頭から急降下するかのように血の気が引いていく感覚がわかった。
少し濡れた唇を手の甲で軽く擦る。
凛から離れて距離を取ると、途切れ途切れに言葉の限りを尽くして述べていく。
「まっ、マジごめん……。全部俺が悪いです……切腹します……本当マジで___」
「おい」
「はぃい……」
「片付け、手伝え」
動揺するAとは逆に凛は落ち着き払っていた。
自分が何だか情けなく感じて顔が焼けるように熱くなり、目にも熱いものが込み上げてくる。
ラッグを立て直す凛の後ろでAは落ちた物を拾い始めた。
562人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます!新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです!モブ夫の活躍に乞うご期待ですね! (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした!笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます!玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます!! (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年2月9日 18時