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自分に渡された思ったらまさかの仲介人だった。
こんなことを一日に何回もされては気が気じゃない。
Aは地面を揺らす勢いで歩き、凛のいる教室へと向かう。
もちろん両手には自分宛てではない大量のチョコレートが入った袋をぶら下げて。
「糸師凛どこだゴルァ!!」
フルネームで呼ぶのは初めてだった。
凛の他に生徒が何事かと不思議そうにAを見ていたが、気にせず凛の席へと向かう。
「うるせえ」
「うるせえじゃねえよ。可愛い女の子たちからの本命チョコだ」
机の上に袋を置き、凛に見せる。
凛は一瞥すると、顔色を一切変えずにAに言う。
「やるよ、それ」
「喧嘩を売られているような気がする」
凛がチョコレートの袋で埋め尽くされている机の上に無理矢理自分のかばんを置くので、反射的に袋を持つ。
かばんの中は学校に必要な最低限の物しか入っておらず、Aを通して凛に渡す生徒以外に直接手渡しした生徒もいるのではないかと踏んでいたので少し驚く。
「あれ。凛に直接手渡しした子もいるのかと思った」
「全部断った」
「はぁ!?マジかよ……」
「こういうの渡されても困る」
「え〜……。嬉しいとかねえのかよ。女の子からこんなにたくさんもらってもなんにも思わないわけ?」
「別に」
「うわ……」
本当にサッカー以外無頓着なのだと思い知らされる。
女子たちはこんな無愛想なヤツのどこがいいのだろうか。
失礼なことを考えていると、目の前に白い箱が差し出される。
手入れが行き届いた手はもちろん凛である。
「なにこれ?」
「渡してくれって」
「え……?」
凛と白い箱を交互に見る。
凛の手の中にすっぽりと収まっている白い箱。
真ん中には鮮やかな青色のリボンの飾りが施されている。
この流れで渡されるものというのは一つしかない。
Aは自分を指さして、口角が上がるのを我慢しながら言う。
「俺、に……?」
「A以外にいねえよ」
震える手で箱を受け取ると割れ物を扱うかのように大事に持つ。
「え!?これ女の子から!?可愛かった!?何組の子!?胸大きかった!?!?」
「騒々しい。黙れ」
「めっちゃ嬉しい……。名前書いてねえかなこれ。お返ししたい」
A、今日一の笑顔である。
「……そんなに喜ぶことかよ」
「あたり前じゃん!だってさ、選ぶとき俺のこと考えてたってことじゃん!?あ、もしかして本命かな!?」
凛は少しAのことを哀れに思った。
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殺痲(キルマ)(プロフ) - 由良の門をさん» コメントありがとうございます!彼は人の間に入ってもみくちゃにされるのが得意なのでもしかしたら今後サンドバッグとして活躍するかもしれません笑 (6月5日 9時) (レス) id: 57b9dc3a01 (このIDを非表示/違反報告)
由良の門を - モブ男かわいいです笑笑彼の活躍を期待してる自分がいる (6月1日 22時) (レス) @page9 id: 2f071b2218 (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - ねぎさん» コメントありがとうございます!新しい何かがほしいと思い爆誕したのがモブ夫でした…。キルマの作品オリキャラが出しゃばってくることが多いので楽しんで頂けて何よりです!モブ夫の活躍に乞うご期待ですね! (2023年4月9日 12時) (レス) id: 6f6fe81f90 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - モブ夫を待ってる自分がいる、、笑。あひょ本も最高でした!笑 (2023年4月9日 3時) (レス) @page50 id: 37620205ea (このIDを非表示/違反報告)
殺痲(キルマ)(プロフ) - 龍さん» コメントありがとうございます!玲王のやつはちょっと心配だったので気に入ってもらえて嬉しいです🥰応援ありがとうございます!! (2023年3月6日 21時) (レス) id: ff5faac6c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:殺痲(キルマ) | 作成日時:2023年2月9日 18時