糸師凛、勉強はレッドカード【2】

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名前)は力を入れ、肩甲骨あたりを親指で押し、前へ持っていくような動きで凛の肩を揉む。

バキッ、と肩から鳴ってはいけない音が鳴った。

「今バキッて鳴った……」

「やめろ。別に俺は＿＿＿」

身の危険を感じた凛は声をかけるが、Aはお構い無しにまた手を動かす。

「やば。めっちゃ凝ってんじゃん」

「ちが＿＿＿」

凛は肩なんて凝っていない。

では体から鳴るこの生々しい音は一体何なのか。

凛は肩の激痛に悶えながらあることを思い出す。

落としたスケッチブックをAに取られたときのことである。

片手で持っているにも関わらず接着剤でくっついたかのようにAの手からスケッチブックを奪うことはできなかった。

生まれてこの方、箸と鉛筆しか持ったことのなさそうのガリ勉になぜ万力のような握力を持っているのか。

それはわからないが、一つ確かなのはAの握力のせいで肩から嫌な音が鳴っているということだ。

当の本人は呑気に手を動かし、凛の肩に激痛を与え続ける。

「無限にチューペット折ってるみたい」

実際、肩甲骨が折れそうである。

「……っう」

あまりにも痛すぎて悲鳴すら出ない。

怒鳴って拳をちらつかせて止めれば済む話なのだが凛がそれをしないのは、Aが聞く耳を持たないということもあるが、最もな理由はAが実に楽しそうだからだ。

凛の痛みを知らず、肩を揉んでいるAの姿は虫を殺している無邪気な子供のそれだがどこか楽しく感じている自分がいる。

肩揉みごときでこんなことを考えるなんて心身ともにだいぶ疲れている。

母が夕食ができたことを伝えるまで、肩揉みは続いた。

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