42.（side_you~ ページ42
side_you
8月31日、
何度カレンダーを見つめてもその事実は変わらない。
夏休みは思ってたよりも楽しくて、
あっという間に過ぎていった。
楽しかったことを思い出しながら、
明日からの学校生活に少し憂鬱を覚える。
相変わらず、私への"嫌がらせ"は続いており、
その度に樹が気にかけてくれていた。
樹に申し訳ないという気持ちと、
それでも、樹がそばに居てくれるだけで心強くて…
正直、嬉しかった。
何も言わずに、ただそばに居てくれる存在が。
こんな時、
私は気を紛らわすため樹の部屋へと向かうのだが、
今日は隣の部屋に樹がいない。
…といっても、多分もうすぐ帰ってくる。
ただ、デートに行ってまだ帰ってきてないだけ。
樹は今朝、ありえないほどの美人と出掛けて行った。
その人と樹が並んで歩く後ろ姿を見た時、
何やら、ほんの少し、心がチクッとした。
でも、その心の小さな痛みはほんの一瞬で、
確かめる間もなく消えてしまった。
｢樹まだかなぁ…｣
樹が越してきた時は、あんなに嫌がってたのに…
今では樹の帰りを待っている。
自分の樹への気持ちの変化を実感していた時、
玄関のドアが開く音がした。
樹だ。
階段を登る足音が大きくなるにつれ、
私は思わず肩を弾ませる。
そして、部屋のドアを開けた。
｢おかえり！｣
樹｢…ただいま｣
と、私の出迎えのテンションとは相反して、
樹はとても暗く、あからさまに元気がない。
そして、樹の左の頬が変に、赤い。
まるで誰かに叩かれたような…
樹は私と一切目を合わせずに、
そのまま自分の部屋にこもった。
ドアが閉まると共に"ガチャ"と、鍵の閉まる音もした。
明らかにこれは、"関わるな"と言われている。
だがしかし、そんなことで引き下がる私じゃない。
私は台所から保冷剤を持ち出した。
そして、自分の部屋からベランダに出た。
そのまま樹の部屋へ侵入するために。
ベランダから樹の部屋を覗くと、
樹がベッドの上で壁の方を向き寝転がってるのが見える。
その背中は、悲しくなるほど切なく、か細く…
いつか、夜の公園で見つけた樹のことを思い出した。
…また、あの時みたいに、私は樹に笑って欲しい。
その思いで胸がいっぱいになり、
私は戸を開け、樹の部屋へと踏み込んだ。
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年10月1日 22時
