39.（side_hokuto~ ページ39
side_hokuto
8月初旬、夏休み。
高二の夏は華やかでキラキラしたもの…
なんてのは、漫画の世界だけ。
そんなことを、
今、俺の目の前の光景が証明している。
樹｢…だぁー！わっかんねぇ！！無理だぁー！！！｣
A｢樹うるさい黙って｣
樹｢は？！お前解けてんじゃん！
抜け駆けすんなよ！！｣
A｢もー！うるさいうるさい！気が散る！！｣
夏休みの宿題との戦いに奮闘する俺の彼女と親友。
俺は7月中に宿題を済ませていたから、そんな2人の様子を眺めて楽しんでいる。
2人の顔は至って真面目なのだが、
その会話はどこかコントのようでおもしろい。
A｢北斗くん、ここどうやって解くの？｣
｢ん？…あ、ここはこの公式を使って……｣
樹｢北斗！ここ！！わっかんねぇ！｣
A｢ねぇ私が先だから！｣
俺を取り合って喧嘩…、悪い気はしない。
俺の夏休みはほぼ毎日こんな感じだ。
午前中に部活が終わり、Aの家で午後を過ごす。
たまにそのまま泊まったり、花火をしたり…
思い返すと、意外と夏を満喫している。
この時間が、
俺にとって必要不可欠なものとなっていた。
樹とAと俺、3人で過ごす時間が楽しいから…
そして、俺がいない2人の時間が怖いから…
…
しばらくすると、樹がやけに静かなことに気づく。
隣を見ると樹は突っ伏して寝ていた。
それにAも気づき、
俺らは目を合わせて苦笑いをした。
樹が喋らないおかげで、
Aはようやく集中して宿題を進める。
窓から差し込む夕日がAを照らす。
その横顔は、俺が大好きなAそのままで…
俺は思わず顔を近づける。
Aも自然とそれに気づき、手を止め、静かに目を閉じた。
2人の唇がゆっくりと、近づき、触れ…
樹｢うぅ…、んー………｣
あとちょっとのところで、樹の唸り声に俺達は静止する。
こいつ…
わざとじゃないよな…？
そう疑ってしまうほどのタイミングに、
俺は樹を睨む。
Aは少し気まづそうな顔をしつつも、
樹の方を向き、優しく微笑んだ。
そのAの眼差しは、
まるで愛おしい人を見るかのようで…
樹に対して、確かな"嫉妬心"を覚えた。
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年10月1日 22時
