37.（side_juri~ ページ37
side_juri
Aと暮らすようになって、2ヶ月が経過した。
季節はすっかり夏。
補習をなんとか免れ、明日からいよいよ夏休みだ。
廊下で偶然にもAを見かけて、
一緒に帰ることにした。
この2ヶ月の間でAとの距離はかなり近づいたと思う。
Aは俺が家で上裸になっても何も言わなくなった。
学校で話しかけても嫌な顔をしなくなった、
むしろ少し嬉しそうな顔をしてくれる。
本人は無意識だろうけど、
Aはおそらく俺に心を開いてくれた。
そんなことを考えながら靴を履き替えて、
Aの方を向く。
そこにいたAの背中は、
ひどく落ち込んで見えた。
そして手には何かを持っている。
後ろから覗き込むと、それは小さな紙切れで…
『男たらし！ビッチ！！』
と、乱雑な文字が書かれていた。
これは明らかな、"いじめ"。
そしてその原因には、俺がいる…と思う。
何よりも悲しいのが、
それをじっと見つめるAの横顔。
哀しさが確かに瞳の奥にある、
なのにそれを、隠そうとしている。
そんな顔すんなよ…
何に対してかはわからない。
けど俺の中には"怒り"が沸きあがってきて、
その感情に任せ、俺はAから紙切れを奪い取った。
俺の存在に気づいていなかったらしく、
Aは驚いた顔で俺を見上げた。
俺は紙切れをもう二度と見たくないという思いで、
ゴミ箱に投げ捨てた。
そんな俺を見ながら、Aは固まってしまっている。
Aが考えていることはだいたいわかる。
きっと、見られたくなかったんだ。
優しいから…
心配なんかかけたくないって。
そんなAを、愛おしいと思ってしまう。
俺が、守りたい。
俺が…
考えるより先に体が動き、
俺の手はA腕を掴み、引っ張り駆け出していた。
｢付き合え！｣
なんて、空気が読めないのにも程があると思うほど
明るい声と顔で、俺はAを連れ出した。
この2ヶ月の間で、
俺は自分の気持ちにある結論を出していた。
俺はAのことが、好きだ。
それはどう足掻いても消えない感情で、
俺を苦しくさせる…やっかいな病気なんだと思う。
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年10月1日 22時
