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side_you
7月下旬、
気がつけば明日から夏休み。
みんなが夏休みの予定を立てている中、
私は1人で尋常じゃない量のノートを運ばされていた。
あのクソ教師め…
という心の声が漏れてしまいそうなほどだ。
「A!」
そんな時、背後から私の名前を呼ぶ声がした。
その声はもうすっかり慣れてしまい、
顔を見ずとも誰だかすぐに分かる。
樹だ。
樹「何してんの?」
「頼まれた、職員室に持って来いって」
樹「この量を?」
「うん」
樹「ひでぇな…、誰に?」
「森本先生」
樹「あのゴリラ…」
ゴリラ…
つい笑ってしまった。
確かに、ゴリラっぽいとこあるかも…。
樹「手伝うべ」
そう言うと樹は私から、
4分の3くらいのノートを軽々と取り上げ一緒に運んでくれた。
職員室で爆睡していた森本先生の寝顔は、
ゴリラ…というより、大きなクマのようだった。
用事が済んだので、私の足は自然と下駄箱に向かう。
樹「もう帰る?」
「北斗くん部活だから」
樹「じゃあ一緒帰ろーぜ」
「うん」
靴を履き変えようとした時、
私は、自分のローファーの上に紙切れが置いてあるのを見つけた。
またか…
最近よくあることだ。
慣れた手つきでその紙を手にし、書かれた文字を見つめる。
『男たらし!ビッチ!!』
まぁ、いつもだいたいこんなもん。
最初の頃はかなりしんどかった。
でも最近はもう慣れてしまって、なんの感情もない。
その汚い文字をしばらく見つめ、ポケットにしまいこむ…
というのがいつもの流れなのに、今日は違った。
紙切れをしまおうとした時、
私の後ろから手が伸びてきてそれを奪った。
驚き振り返ると、そこには樹がいて、
紙切れを一目見るとグシャッと丸めてゴミ箱に捨ててしまった。
私はどうすればいいかわからずに固まってしまう。
誰にも見られたくなかったな…
なんて考えていると、突然、
樹は私の腕を掴み、引っ張りだした。
樹「付き合え!」
重く暗い雰囲気を吹き飛ばすほどのその明るく優しい声と表情に、私は確かに救われた。
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作者名:さいか | 作成日時:2018年10月1日 22時