32.（side_you~ ページ32
side_you
待ちに待った日曜日。
精一杯のオシャレをして挑む初デート。
動物園は家族連れやカップルで混み合っていた。
北斗｢はぐれないようにしなくちゃね｣
少し前を歩く北斗くんを見失わないよう、
私は少し早歩きで進んだ。
｢あ！シマウマだ！可愛い〜｣
久しぶりの動物園に高校生らしくなく、
はしゃいでしまう。
北斗｢シマウマってね、"ワンワン"って鳴くんだよ｣
｢そうなの？…犬みたい……｣
子供のようにはしゃぐ私とは反対に、
北斗くんは大人っぽく動物の豆知識を話してくれた。
すごいなぁと思う反面、
自分が悲しくなった。
博識な北斗くんと平凡な私…
私は北斗くんと、お似合いじゃない気がしてくる。
私、北斗くんの隣にいていいのかな…？
…
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
閉園まであと少し、
私たちは最後にお土産を買って帰ることにした。
園内の小さなお土産屋さんには、
動物の小物がたくさん並べられていた。
｢これ可愛い…｣
私の目にとまったのは、
フクロウの小さなキーホルダー。
北斗｢ほんとだ｣
北斗くんは白と黒の2種類のフクロウを手に取る。
北斗｢どっちがいい？｣
｢んー、白｣
北斗｢…だと思った｣
北斗くんは優しく微笑み、
それをレジへと持って行った。
ちゃっかり買ってくれるあたりが北斗くんらしくて、大好きなんだよなぁ…
と、北斗くんの背中を見ながらしみじみ感じた。
北斗くんを待っている間、
私はそこら辺の小物を眺めていると、
｢…かわいいな……｣
またしても、私の目を引くキーホルダーがあった。
それはカラフルなライオンで、
どことなく樹に似ている感じがする。
樹、喜ぶかな…？
樹の喜ぶ顔が見たくて、
私はそのライオンを購入した。
…
北斗｢はい、白ね｣
｢ありがとう！｣
北斗｢俺は黒、お揃い｣
北斗くんはいつの間にか黒のフクロウのキーホルダーも買っていたらしく、
私の目の前でそれを嬉しそうにユラユラ揺らしている。
私の手には白いフクロウのキーホルダー、
それは北斗くんとお揃いの宝物。
北斗｢今日は楽しかった…ありがとう｣
北斗くんはいつものように、
私の頭を撫でて自宅へと帰って行った。
私は今日の楽しかった時間を、
何度も繰り返し思い出した。
白いフクロウと、
カラフルなライオンを大切に持ちながら。
.
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年10月1日 22時
