7.（side_hokuto~ ページ7
side_hokuto
高一の春、俺は運命の人と出会った。
桜舞う通学路で、ゆっくりと歩いている少女…
名前も知らなかったし、歳も知らなかったけど、一瞬で好きになった。
今までたくさんの人に"好きだ"と言われてきたけど、自分にその気持ちが分かることは無かった。
でも、今ならわかる…俺は彼女が好きだ。
勇気を出して彼女に話しかけ、歳も名前も、趣味だって知れた。
それからAは、俺の恋人になった。
A｢ほーくとくんっ｣
｢うわっ…！びっくりした……｣
A｢ふふ…っ、ごめんごめん、教室にいなかったから…ここかなぁ〜って思って｣
放課後、俺たちは恋人らしくふたりきりで帰る。
と言っても、俺は部活があるから一緒に帰れるのは月曜と金曜だけだけど。
今日はAが先生に用事があったらしく、ラウンジで本を読んで1人で待っていた。
普通に声をかけずに驚かすあたり、Aらしくて可愛い…
｢帰るか｣
A｢うん！｣
帰り道は会話が途絶えないようにしながら、ゆっくり歩く。
｢今読んでる本、たまたま本屋で見かけたんだけど…｣
A｢へぇ〜そうなんだ…｣
Aはいつも俺の話で笑ってくれる。
一緒にいて、心地が良い。
｢この前まで読んでた本とは全く違うんだ…｣
A｢この前は、サスペンスだったよね…｣
何気ない会話がこんなに楽しいなんて…生まれて初めてだった。
この時間がずっと続きますように…なんて思ってしまうくらいに。
｢じゃあ、今度貸すよ｣
A｢いいの？待ってるね｣
そして、Aの家に着く。
この時間はすごく寂しい。
｢じゃあ…また｣
A｢…うん、また来週｣
特に金曜日は、"また来週"だからよけいに…
Aの寂しそうな顔を見てると、ここらから離れるべきではないとさえ思う。
｢メールするよ｣
A｢私も、メールする｣
俺はAの頭をクシャクシャっと撫で、自分の家へと歩き出した。
恋愛って切ないな…なんて思いながら。
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作者名：さいか
| 作成日時：2018年10月1日 22時
