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第9話『決意』 ページ10

「あ、いや……兄妹そろって囲碁部に入るなんて本当に囲碁好きなんだなぁって思って……」

「当たり前じゃない。囲碁が好きじゃなきゃ囲碁部なんて入らないよ。私は兄のためじゃなく自分のために入ってるの」

「え、お兄さんのためじゃいんですか?」

「違うよ。確かに囲碁を好きになったきっかけはお兄ちゃんだけど……私はね、もっといろんな人に囲碁のことを知ってほしいの。楽しさやおもしろさだけじゃなくて、難しいところや思ってるより実は簡単で……でも奥が深いんだって。だから私はどんなに人が来なくても諦めない。文月さんみたいに囲碁知らないけどやりたいって思う子がきっといるはずだから。私はそんな子に教えたいの」

「………」

筒井先輩の目は真っ直ぐ前を向いていて輝いていた。

――そう、今日見た進藤ヒカルという人の目と同じように

***

「今日は話せて楽しかったわ。じゃあまた明日ね、文月さん。」

「あ、はい。さよなら」

話している間にすぐに校門にたどり着き、私達は別れた。

筒井先輩はニッコリ笑って手を振り、私はぺこりとお辞儀で返す。

筒井先輩は前を向き、歩いていく。

夕日に照らされたその背中を見ながら私は心の中で沸き上がる何かを感じていた。

今日の筒井先輩の話を聞いて、先輩の目を見て……

私は羨ましいと感じていた。

あんな目を輝かせて話せる事なんて私にはない。

私もあんな顔をして話したい……。

私はぐっと鞄を握りしめ、だんだん遠くなっていく筒井先輩の背中に向かってすぅ、と大きく息を吸い込んだ。

「筒井せんぱーーい!」

「!」

その吸い込んだ勢いのまま、私は大声で筒井先輩の名前を呼んだ。

筒井先輩はびっくりして振り返る。

私は大声のまま続けた。

「私っ、絶対囲碁部入りますから!筒井先輩に囲碁の事いろいろ教えてほしーですっ!」

息継ぎをせずに言い切り、私は少しはぁ、としながら筒井先輩を見つめる。

周りの人はなんだ、なんだと私達を見る。

筒井先輩はその視線に少し恥ずかしそうにしながらも大声で「ありがとう」と笑顔で返してくれた。

私も嬉しくなり、笑顔で返した。

筒井先輩が今度こそ前を向いて歩いていく姿を見送り、私も胸を踊らせて帰路へと足を進めた。

本当は囲碁部に入るつもりなんてなかったはずなのに私はすっかり囲碁部に期待を膨らませていた

第10話『囲碁教室』→←第8話『筒井先輩のお兄さん』


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りむる - 続きがすっごく気になる素敵なお話でした!更新待ってます! (5月14日 23時) (レス) @page25 id: 85f3bd2ffd (このIDを非表示/違反報告)
- すごい良かったです、続きがすごく気になります! (2021年8月28日 22時) (レス) id: 264732fb4b (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ(プロフ) - 最近ヒカルの碁を読了し、この小説を見つけました。全ての話がとても面白くて、単純に続きが気になります。更新待ってます。 (2020年1月3日 0時) (レス) id: 2ab9522383 (このIDを非表示/違反報告)
莉央 - ヒカルの碁面白いですね。よく観てました懐かしく思い本を借りて読んでます。続き気になりました。 (2018年3月30日 22時) (レス) id: 487e1672d0 (このIDを非表示/違反報告)
ミコト(プロフ) - 続きとても気になります!最新お待ちしております (2016年2月28日 23時) (レス) id: 26c314a162 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:凡子 | 作成日時:2014年1月4日 0時

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