第16話『私じゃない』 ページ17
「あ、白川先生！この子阿古田さんに勝ったんですよ〜！」
輪に入ってきた白川さんの隣にいたおばさんが得意げに話しながら「ねぇ？」と私の肩に手をおいて笑いかける。
「えっ！？そんなまさか…！」
白川さんは驚いたような顔をして、碁盤を覗き込む。
すると一息飲んでから静かに「ほ、ほんとだ…」と呟くように言った。
そして当の私はというと何が起こったかわからず…いや、ただ一つだけはっきりしてることがある。
違う。
私じゃない。
私はただ碁石を手に取っただけ。
そうだ。
気付いたらいつの間にか対局が終わっていて…
そこでズキンっと頭に鈍く痛みが走る。
そして同時に脳内で過る声。
『私はまだ成仏できないのです。ある者と神の一手を極める為の勝負をするまで…！その者との勝負で必ず神の一手を極めてみせる！だから…だからどうか…！』
これは夢の中…佐為が言っていた言葉だ。
そこで私はハッとする。
まさか。そんな…あれはただの夢なんじゃ…
ある考えに至って、私は全身の血の気が引いていく。
「文月さん、君は…本当に初心者なのかい？」
先生が私の顔を覗き込み、不思議そうに尋ねる。
だけど、私は答えるなんて余裕はなくて
「すいません！」と立ち上がる。
「わ、私…もう帰らなきゃ行けないので帰ります！」
「えっ！？ちょ、A！？」
「失礼しました！」
お姉ちゃんの呼び止める声も聞かずに、私は逃げるように囲碁教室を後にした。
＊＊
佐為が言っていたあの言葉。
あの時は何も思わずにただ返事をしてしまった。
だけどよくよく考えると、あれは『成仏できないからある人と碁を打たせて欲しいんだけど佐為は私の夢の中でしか存在できないからその私の意識を借りたい』そういうことだったんだ。
つまり、あの時一瞬意識がなくなったと私が思ってたまさにあの瞬間…佐為は私の意識を借りて私の身体で碁を打っていた。
そう…私は取り憑かれていたのだ。
そこまで考えてヒヤッとしたものが背筋に走る。
やだ。
やだやだ。
そんなこと聞いてないよ…！
私は頭を抱え込む。
その時だった。
ドンドン
「ちょっとA〜！どうしたのよ一体！ご飯も食べないで」
お姉ちゃんが私の部屋のドアを叩いて外からそう言っている声が聞こえてくる。
だけど私は何も言わずにベットの布団にくるまって聞こえないふりをする。
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りむる - 続きがすっごく気になる素敵なお話でした！更新待ってます！ (5月14日 23時) (
レス) @page25 id: 85f3bd2ffd (このIDを非表示/違反報告)
漣 - すごい良かったです、続きがすごく気になります！ (2021年8月28日 22時) (レス) id: 264732fb4b (このIDを非表示/違反報告)
ひとみ(プロフ) - 最近ヒカルの碁を読了し、この小説を見つけました。全ての話がとても面白くて、単純に続きが気になります。更新待ってます。 (2020年1月3日 0時) (レス) id: 2ab9522383 (このIDを非表示/違反報告)
莉央 - ヒカルの碁面白いですね。よく観てました懐かしく思い本を借りて読んでます。続き気になりました。 (2018年3月30日 22時) (レス) id: 487e1672d0 (このIDを非表示/違反報告)
ミコト(プロフ) - 続きとても気になります！最新お待ちしております (2016年2月28日 23時) (レス) id: 26c314a162 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：凡子 | 作成日時：2014年1月4日 0時
