億劫なほど/積田長幸 (ページ2)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:2,436 hit

つたえるのも億劫なほどページ2

『ねぇ長幸、十二大戦っていつなの？』

それはかの有名な断罪兄弟が借りているマンションの一室、パソコンに向かいポテチを頬張っている彼[積田長幸]のベットで寝転がっている彼女が発した言葉。
食べる手をやめ彼女の方を向きながら「確か1ヶ月後だがそれがどうかしたのか？」と長幸は彼女に聞く。
彼女は何を今更聞いているんだ？とでも言うように首を傾げる彼を見て彼女は少し困った顔をしながら『あんたと剛保と一緒にこうやって何気ない日常過ごすのもあとちょっとになっちゃうんだなと思って』と目を伏せる。
そんな彼女に白雪姫を目覚めさせるように
優しく近づいてキスをする長幸。
王子様のキスに目を開いた彼女は眉をハの字にし困ったように、悲しそうに優しく笑みをこぼす。そんな彼女を見て長幸は
(きっと結果良くても親友か恋人のどちらかしか帰ってこないっていうのは残される女からしたら辛えものなのかもな)と心の中で思う。
彼女は剛保の親友であり剛保が家に連れてきたことにより長幸と彼女の交際は始まったようなもので彼女からしたら必ずどちらかを失ってしまう、最悪両方を失ってしまうという、耐え難い苦痛だろう。
優しいキスを数回繰り返した後そのまま長幸は頭で色々考えながら同じベットに寝転び彼女を抱きしめた。
彼女の寂しさを、苦しさを、不安を、切なさを、
痛みを、喪失感を、疑問を、思考を、
紛らわせる為に。
きっと彼女朝起きて自分を含めた３人分の朝食を作るのだろう。
また苦しい考えを頭に巡らせたまま。
それまでの子供騙しでいいから目の下にクマを作る彼女が今日はぐっすり眠れることを祈った。
『おやすみ』
彼女が目を閉じ寝息を立て始めたことを確認して、長幸は直前に聞こえた彼女の消えそうなおやすみに頭を撫でながら「おやすみ」を返し目を閉じた。