全部捨ててもいいよ。 (ページ2)

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1話ページ2

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あの日、一生で1番泣いて笑ったであろう、あの日。

あの光景を私は一生忘れないだろう。

最後の曲を歌いきり退場のアナウンスが流れ始める。表も裏もガヤガヤと騒がしい。

もう号泣しっぱなしで殆ど意識のないまま舞台裏へと帰ってくる。泣き腫らした目でボロボロの私を、龍太くんは隣でずっと支えてくれていた。

自然と、スタッフさんたちから拍手が送られる。メイクさんが差し出してくれたタオルを震える手で受け取り、握り締めると、どうしてかまた涙が溢れてきてしまった。

｢Aちゃん、！｣

私を見つけたみっちーが震える声で近寄ってくる。

｢…平気？｣『ん、。だいじょ、ぶ。ごめんな、』

後輩の前では気丈でいようとするけど、その潤んだ目を見ると、やっぱり色々思い出してしまって涙を流すしかなくて。それをまた誤魔化すように、いつの間にか身長も越されていた彼の背の高い身体に抱きつく。
泣いてる私を見て、また泣かせちゃったみたい。

…ほんと、最後までかっこいいとこ見せられない。

『ごめん、ほんまに…ごめんなぁ…』

他にもっと言うことがあるのに、言わなきゃいけないのに、出てこなくて。

｢あ、…いた、A｣｢Aちゃん、｣

大吾と和也も、子供みたいに泣きじゃくる私を見て戸惑いながらも駆け寄ってくれる。

大吾が私のタオルをそっと奪い目じりの寄れたアイラインを直して、絡まった髪をするりと撫でる。

｢泣いたらあかんよ。可愛い顔台無しやで｣

自分だって康二と話した後さっきまで裏で大泣きしてたくせに。そうやって、いつも私ばっか庇って。
そうやって、最後まで優しくして。

｢…A、最後、ちゃんとせなあかんやろ。行くで｣

私達の様子を静かに見つめていた龍太くんがそう声をかけた。
3人で、最後の挨拶回りに行く。
関係者さん方含めみんなにはそこで正式に、自分たちの口から伝える。

関ジュとしてのケジメでもあり、正真正銘、最後の仕事。