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「あ、あの俺の名前…」
貴『この状況で自己紹介の必要はない』
名前を言われる前にきっぱりと言う。
そもそも私は、今ここで人の名前を覚える気などない。
それにまだ相手を信用していないから。
「…もしかして首謀者?」
どうしてそうなるんだ。
そう思っても敢えて口には出さなかった。
貴『…さあ?どうだろうね』
向こうも私も一定の距離を保ちながら様子を伺い合う。
相手は何も知らなさそうだし、とりあえずこのままそっとしておこう。
「俺、仲間と体育館から来たんだ」
突然相手が話し始めた。
仲間…つまりこの少年は体育館からのスタートで他にもここへ連れてこられた人がいる、そういうことなのだろう。
「で、君はどこから?」
貴『…さぁ?』
「さぁ…って」
貴『…私が目が覚めた場所は教室。だけど、その教室がなんなのかを調べる前に追いかけられては調べようがないでしょ』
あの状態で調べられるって無理な話だ。
まあ、あの時自分がどの教室にいたかなんて確認する気は微塵もなかったのだが…。
とにかく私は自分のいた教室がどの教室かわかっていない。
ついでに言えばここが何階なのかも知らない。
「そうなんだ…」
どこか納得しているようで、していない表情。
私が君の立場なら同じ気持ちだろうね。
ペタ…ペタ…
突然、素足で歩く音が聞こえてきた。
一瞬にして緊張が走る。
「やっべ!き…」
大きな声を出そうとした少年の口を慌てて手で塞いだ。
こいつバカか。
異常な【何か】は何に反応するか分からない以上は下手に音なんて出さない方が身のためだ。
まして声なんて以ての外。
ペタペタペタペタ
足音が早くなった。
キッと睨むと男は困ったような顔を向けた。
それで謝っているつもりなのか?
バレたのならもう仕方ない。
貴『…これあげる』
私はこの教室で見つけたメモを少年に渡した。
受け取りはしたが、少年は不思議そうにこちらを見ている。
「?」
貴『この教室で見つけた物だよ。ヒントになるかと思って持って行こうとしたけど、仲間がたくさんいる君が持つ方がいいだろうね』
内容はもう頭の中に入っているから別に無くても大丈夫。
「えっ、一緒に体育館に…」
貴『今ここを一緒に出るのはリスクがあるでしょ』
そもそも一緒に行動する気も、彼の言う【仲間】が集まる場所にも行くつもりはない。
だから…
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サイガ(プロフ) - 睡-スイ-さん» コメントありがとうございます。頑張って修正しますのでお楽しみにお待ちいただければと思います。 (2019年11月7日 22時) (レス) id: 9c794300d7 (このIDを非表示/違反報告)
睡-スイ- - サイガ様の脱出シリーズ、書作の更新時からずっと楽しく拝見させていただいてます!修正などって大変ですよね、再構成から入りますし…ゆっくり、サイガ様のペースで構いませんので更新、完成を楽しみにしています!! (2019年11月7日 11時) (レス) id: 471e0d1ff2 (このIDを非表示/違反報告)
サイガ(プロフ) - LiLiToさん» コメントありがとうございます。今修正を行っているため鍵付きにしております。 (2019年10月4日 7時) (レス) id: 9c794300d7 (このIDを非表示/違反報告)
LiLiTo(プロフ) - この作品の2と3が鍵付きなのですが解除パスってないのでしょうか? (2019年10月3日 5時) (レス) id: 41e08bc415 (このIDを非表示/違反報告)
CHIHO(プロフ) - 全然大丈夫です!ゆるりと気長に待ってます!! (2019年8月30日 9時) (レス) id: 6e1910104e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サイガ | 作成日時:2015年7月20日 22時