＿02. ページ4
.
「……あー…ちぃと派手にやりすぎたなぁ」
あの高層ビルの面影もない成れの果てにしみじみ思う。
その土地周辺は瓦礫の山で、散らばったガラスの破片が雨粒に打たれてキラキラと輝いている。見事にその場所だけくり抜かれたかのようになくなった高層ビルだが、果たして政府に届く請求書は一体いくらになっているのやら。
因みにだが、チーノも言っていた通り、人質は全員無事である。
多少の怪我はあるかもしれないが、死亡者は一人もいない。しかもそれだけではない。犯人ら4人も死亡せず、確保。おまけに周辺に群がっていた群衆の中からも誰一人死亡者、重症者を出していない。
これは流石政府だとスタンディングフォーメーションをすべきだと思う。
いや、政府がって言うより我が第三師団が素晴らしい。俺の自己中でビルを破壊したのにも関わらず、崩壊の瞬間、見事な団結力と判断力と身体能力で人質及び犯人らを回収し、地上に返してあげたのだから。いやぁ、一般兵とはいえ、見習うべき点はまだまだある。習う気はないが。
「俺も流石にビルごと破壊するなんて思いもしませんでしたわ。始末書何枚ぐらいになるんですかね〜？アルバヘイトさん、お疲れ様です！」
「まぁ、ビルの破壊といい、周辺被害といい、責任は全部お前持ちだからな。俺には関係ねぇもん」
「…は？はぁぁぁ！！？なんでや！！」
「なんでも何も、ここの担当責任者、お・ま・え。んふふ、ご愁傷様」
「おまっ！！まさかわざと！！！何やってくれてんねん！！」
「俺に迷惑かけたお返しだばーか」
絶望したような顔をしているチーノを俺は鼻で笑ってやった。
こちとらせっかくの休日を潰されたのだ。これくらい許される。他が何と言おうが俺が許すから問題ない。俺と言う人間は自分に甘いのだ。
その時、ドンっと前方から歩いてきていた男に肩が当たる。
「……おっと、これは失礼」
低い声だ。
俺は男を見る。黒いトレンチコートを羽織り、身なりは中々の貴族だとお見受けできる。顔は深く被ったハットで見えないが、微かな風に靡く金の髪が懐かしさを思い出させる。
あぁ、そうか。
あれからもう既に5年の月日が流れてしまっていたんだった。
腹違いの兄と生き別れになったあの日、俺は政府の人間となった。
ババドル・ローヴァードが言うことには、アイツは4年前に国境を越えたと聞く。今頃はきっと、他国で平穏に暮らしているに違いない。だって、アイツは俺が死んだと思っているのだから。今更、この国を革命する意味がないのだから。
「…いえ、こちらこそ」
俺は愛想笑いを浮かべると、そのまま迎えにきていた車に乗った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 160人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
灰月蓮也(プロフ) - 最終的に兄弟対決になってフィラが負けて「これで革命は終わりだ｡､､､ありがとう｡お兄ちゃん」って言って死んでくれたら僕が嬉しい｡性癖に刺さる｡大好きです｡ (2022年9月1日 21時) (
レス) @page5 id: c79d198a7a (このIDを非表示/違反報告)
AINAIN819(プロフ) - 続編ありがとうございます！！内容が深く面白くめちゃくちゃ好きです！これからも頑張ってください！ (2022年8月27日 9時) (レス) @page5 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)
しきれさん(プロフ) - 続きだ…！！めっちゃ嬉しいです！更新頑張ってください！！！！ (2022年8月25日 23時) (レス) @page5 id: bb34574bf7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あまやみ。 | 作成日時：2022年8月25日 10時
