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86* この手を握れるのは、今は俺だけ ページ38

「ー…なーんてなァ」

「エッ」


ふっ、と突然さっきまでの雰囲気は無くなる。
まるで暗かった視界は晴れて、遠くの方で聞こえるガヤも耳に入る。

放心状態のAのその間抜けな顔を見て、銀時は苦笑する。


「Aちゃんすーぐ引っかかるんだからぁ〜
財布の中身とか無くなってない?銀さん心配」

「……! もう、からかったな!」

「つい、可愛くて」

「やめてよ銀ちゃん! セクハラでお巡りさんに言うからね!」


銀時の意地悪そうな顔に、途端にほっとした顔で破綻するA。
無意識にでも、銀時はそんな顔、見たくなかった。



「ー…何で、あいつなんだよ」

「なんて?」

「…いや、帰ろっか」


困ったように微笑んだ銀時が何だか寂しそうに見えてしまって。
思わず、銀ちゃん、と声を漏らすA。
その声は、何だかとても切ない音がした。


「何でもねーよ」

「……ほんとに?」

「おー」


いつもの気怠げな目に戻って、彼女の方に手を差し出す。
その手をおずおずと握る小さな手。

刀を扱う男を知らない、柔らかい手だ。


ーー…卑怯な報酬だって、俺が一番分かってンだよ。


「、銀ちゃん、?」


ぎゅ、とその手を確かめるように、強く握り返す。


ーー……だけど、今。隣にいるのは、…俺だ。










「本当にどうもありがとう、銀ちゃん」

「どういたしまして
一人で寝れる? 銀さんが添い寝してあげよっか!?」

「…お巡りさー」

「嘘うそ! すみませんでした!!」

「冗談だよ」


無事にそのあとは何事もなく夜の道を話しながら彼女の家まで散歩して。
こうして冗談を言えるまでは、彼女の回避能力は高いようだ。

名残惜しそうに離れる銀時の手。
そうとも知らず、門内へと入り、銀時が踵を返すのを待つA。


「…… A」

「…ッはい、」



「ー…もし彼奴の事で辛くなったら、

……俺も、お前を待ってるから」



…ざわ、また、あの雰囲気。


息を呑むほど綺麗な銀髪が揺れて、思わず彼女も呑まれそうになる。




「…銀ちゃん、…ごめ、」


「きかねえ、聞きたくねえ

お前の口からは、…それだけは、言うな」



その時の銀時の顔がどうしようもなく切なくて、もう一度断るのは野暮だと察し、Aはそれ以上何も言えなかった。









男が帰って、閑散とする嫌な静けさ。
自室のベッドに潜り込んでも、いつもの温もりはなかった。



「そばにいてよ。……総悟」



思い出すのは、あの栗毛。

87* もしかして避けられてる?→←85* 二人して、そんな顔。



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- うぇ!? なんですかこの作品!…………神じゃないですか!! 作者様神ですか!? この神作品を作ってくださって有難うございます!いつまででも更新待ってます! (2018年10月3日 19時) (レス) id: 6ebd955238 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - 主人公とキャラの駆け引きがとっても自分のタイプです!これからも応援しています! (2018年4月3日 22時) (レス) id: 2e9a8055ee (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - これからも頑張ってください! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 総悟大好きなので、すごく面白いです!これからも更新がんばってください! (2018年1月31日 20時) (レス) id: f4f18cc943 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田くんオチですか。…沖田くんオチって意外と人気あるんですよねコレが。こんな駄作者な私でも100hitも行けるくらい。沖田くんはやっぱ最高だった。続き待ってます。と言っても最後のセリフは完全に襲う気マンマンだけど。 (2018年1月8日 6時) (レス) id: 2ca11f0d25 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2017年10月29日 20時

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