84* そうだ、この男を忘れていた ページ36
「あ、また子ちゃん! ばいばーい!」
「A! 寂しいっス…」
「何敵に挨拶してやがんでィ」
「友達だもん」
よいしょ、と立ち上がって、船の中を出口目指して悠々と歩く。
総悟は不満そうだが、ここは彼女の友達でいっぱい、だそうだ。
「出れたー!」
「迷宮みたいに言うんじゃねェや」
「楽しかったね探検」
「その口塞いでやろーかィ」
荒々しい言葉だが、彼女が慣れない下駄で転ばぬ様、彼女の腰を支えている。
それが着ている崩れていた向日葵の着物が正されているのも、言わずもがな。
「―……あ、晋助さん」
「…ア?」
「さよなら、晋助さん! また!」
「……」
何故かふと思いとどまったAが、踵を返してぶんぶんと手を振る。
総悟も振り返って見てみれば、船の最上階の丸い窓から、煙管を蒸す片目のの男がひらひらと手を振り返していた。
「何してやがんでィ、帰るぞ」
「総悟、コンプラ」
相変わらず風流な姿の男に嫌気がさして、彼が男に向け中指を立てて彼女の手を引く。
そんな行動にため息つきつつも、何だかんだ彼女は嬉しそうだ。
「ねェ総悟、祭り明日も行こうよ」
「は?」
「だって今日全然楽しめてないし」
「今日ので懲りただろィ」
「でも総悟が守ってくれるでしょ?」
「……」
――全くもってこの女。
守る守らないの問題じゃない。いやつーか四六時中俺ァテメェを守ってるってんだ。彼氏じゃなくてセコムかっつー位ェ見てんでさァ。
……という上記の思考が繰り広げられる事約0.5秒。
直後、盛大なため息がでて男は項垂れた。
「明日は……私服ですぜ」
「やったー!」
……どうしても、この女には甘いらしい。
唯、彼女の笑顔が見たいが為に総悟は弱るのだろう。
「じゃあね、今日は総悟の好きなスパゲッティ作ったげる」
「好きじゃねェ。お前が得意なだけだろィ」
「バレた?」
「当たり前でさァ」
数時間ぶりにだが、二人並んで他愛もない話をしていた。
――……それは、一瞬で崩れるのだ。
「―…あれ? 銀ちゃん」
「……ッ、」
「やっほー。何かお困りの様だったから? 来ちゃった」
「そうなんだ。ありがとう」
木刀を腰に差した着流しが、港に居た。
呑気に手を上げて死んだ魚の目でこちらを見る。
それだけで、総悟の身体からは嫌に脂汗が出た。
「待ってたの?」
「うん。――…取り立て屋だから」
「あはは、何それ」
――…その時、するり。
総悟が、彼女の腕を離した。
85* 二人して、そんな顔。→←83* くそ。可愛いじゃねェか
278人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桃 - うぇ!? なんですかこの作品!…………神じゃないですか!! 作者様神ですか!? この神作品を作ってくださって有難うございます!いつまででも更新待ってます! (2018年10月3日 19時) (レス) id: 6ebd955238 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - 主人公とキャラの駆け引きがとっても自分のタイプです!これからも応援しています! (2018年4月3日 22時) (レス) id: 2e9a8055ee (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - これからも頑張ってください! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 総悟大好きなので、すごく面白いです!これからも更新がんばってください! (2018年1月31日 20時) (レス) id: f4f18cc943 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田くんオチですか。…沖田くんオチって意外と人気あるんですよねコレが。こんな駄作者な私でも100hitも行けるくらい。沖田くんはやっぱ最高だった。続き待ってます。と言っても最後のセリフは完全に襲う気マンマンだけど。 (2018年1月8日 6時) (レス) id: 2ca11f0d25 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おそらまめ | 作成日時:2017年10月29日 20時