81* ヒーローは大体遅い ページ33
ガララッッ
「―……よぉ、がっつきすぎて愛想でもつかされたかい」
「……ハァッ、…」
いつになく乱暴に開けられた引き戸と、余裕ない足音。
万事屋のソファで寝転んでいた銀時が、止まった足音の方も見ずに嘲った。
「―…あいつが、消えやした」
「……あンだって?」
「俺が目を離したのがいけなかったんでィ…屋台駆け回って全部探したがいやしねェ。
誰に連れ去られたかも検討つかねェんでさァ」
「……旦那」
沈黙の後の、小さな総悟の呻き。
銀髪がちらりと彼を見た。
落胆しきった顔。大きく着崩れた縦縞しじら。
女ひとりに必死になって、と蔑視しながら、重い腰を持ち上げた。
「―…俺も、人の事言えねェか」
「旦那、」
「……報酬は俺が決めるからな」
一切目を合わさずに吐き捨てて玄関へ急ぐ。
自身の黒長靴を履く際、ちらりと沖田の靴を見やる。
乱雑に吐き散らかされていた紺の下駄を見て、大きくため息をついた。
*
「うう、……」
「起きたか」
――紫煙の匂いがすん、と香った。
嗅ぎ慣れない匂いと、腹元の窮屈さにうざったくなってようやく目を覚ました女。
温い手で目を擦って、声の鳴る方へ体を寄越す。
窓縁に片膝ついて煙管を蒸す女着物の色男と目が合った。
「しんすけさん…?」
「よォ、随分早ェお目覚めだなァ」
「あれ、私……」
「眠らせたんだよ。強ェクスリで」
その言葉を合図に、男が持っていた煙管を床に落として立ち上がる。
煙の上がる煙管の先を裸足の裏で踏みつければ、畳の上に薄黒い
訳の分からない高杉の意図に首を傾げつつも、得体の知れない恐怖でAはおぼつかない体を後退させた。
「ど、して…そんな事」
「奪うためだよ。
お前を」
「……―、」
Aを壁まで追いやると、高杉がしゃがみこんで壁にとん、と人差し指をついた。
そして真っ直ぐな瞳で彼女に向かってそう言う。
たったそれだけの事なのに……この男は、人の心を揺れ動かす。
「もうすぐ江戸を出る
俺はお前を連れて行く。
俺と一緒に来い、A」
「……っ、」
彼女の顎をひと撫でして、ゆっくりと上へ向かす。
びくんと反応して、それきり彼女は高杉から目が離せなくなった。
徐に顔を近づけた時…カタリと襖が鳴った。
「―……誰の女に手ェ出してんでィ」
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桃 - うぇ!? なんですかこの作品!…………神じゃないですか!! 作者様神ですか!? この神作品を作ってくださって有難うございます!いつまででも更新待ってます! (2018年10月3日 19時) (レス) id: 6ebd955238 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - 主人公とキャラの駆け引きがとっても自分のタイプです!これからも応援しています! (2018年4月3日 22時) (レス) id: 2e9a8055ee (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - これからも頑張ってください! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 総悟大好きなので、すごく面白いです!これからも更新がんばってください! (2018年1月31日 20時) (レス) id: f4f18cc943 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田くんオチですか。…沖田くんオチって意外と人気あるんですよねコレが。こんな駄作者な私でも100hitも行けるくらい。沖田くんはやっぱ最高だった。続き待ってます。と言っても最後のセリフは完全に襲う気マンマンだけど。 (2018年1月8日 6時) (レス) id: 2ca11f0d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2017年10月29日 20時