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78* じんわり、甘い ページ30

カラ、コロ、


「ねえ見て、」「わ…」



紺の鼻輪の下駄が歩くたびにかわいい音を出して、すれ違う人が次々と振り向く。

―…感嘆の声をもらす理由は、彼女の容姿で。


甘い顔、というのはまさに彼女を指す言葉である。
俯き加減の彼女の頬に、長く細い睫毛がゆったりと影を落とす。


はんなりと結ひ上げられた茶色の髪型に、紺の簪のアヤメの花が控えめに主張する。
そこから見えるうなじは、ほんのりと桃色に色づいて。

汗ばんだ白い肌は、いつになくハラハラした色気を含んでいた。



「…よし、定刻前」



待ち合わせ場所に到着して、広場の時計を見る。
10分前。――…早く来すぎたか、とベンチを探していると……視界の端に、栗色を見た。


――カラ、コロ……


「……総悟、」

「―…A? お前、」


着流しの、黒地に紺の縦縞しじらの浴衣。
少しはだけたそれからは、鎖骨がちらちら見えて。

いつもより少し大人びた雰囲気を纏った総悟が、Aを捉えて固まった。


「ハァ……参った」

「え?」

「んなに綺麗になると思ってなかったぜ。…くそ、惚れ直した」

「えっ?」


相変わらずのポーカーフェイスを、片手で押さえて背ける。
よく見れば、その耳は心なしか赤く染まっていて。


 いつも化粧をしない美人が化粧をすれば……ただじゃすまなさそうな危うさを持つ美を放っていた。



「祭なんざ興味も無かったが……おかげで来たかいがありやした」

「えっ、…わっ?」

「今日はずっと掴んどきなせェ。離したら殺しやす」

「ねぇもっといい言い方ないわけ!」


歯向かおうとしたAだったが……するりと絡め取られた左手を感じて、声を奪われたみたいに静かになった。

 それを見下ろす総悟の顔は、言うまでもなく。





「……にしても、祭ってのは何でこんなに人が多いんでィ」

「まあ一年に1回だけなんだし」


――こんな多さじゃ、きっと嫌な予感しかしねェ。

頭の中にある一人がよぎった瞬間、視界の端で気だるそうな銀髪が揺れた気がした。


「―…A、」

「ん?」

「…後ろの帯緩んでやすぜ。直しまさァ」

「えっ、……あ、りがと、」


わざと、―…ゆっくりと。
彼女に覆い被さるように、まるで抱きしめてるような体勢で帯を締める。

彼女の目の前は、総悟の鎖骨付近。
恥ずかしそうに俯く彼女は、ほんのりと頬を赤らめさせた。


「……直りやした」


銀髪が消えたのに、彼女は気づかない。

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- うぇ!? なんですかこの作品!…………神じゃないですか!! 作者様神ですか!? この神作品を作ってくださって有難うございます!いつまででも更新待ってます! (2018年10月3日 19時) (レス) id: 6ebd955238 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井(プロフ) - 主人公とキャラの駆け引きがとっても自分のタイプです!これからも応援しています! (2018年4月3日 22時) (レス) id: 2e9a8055ee (このIDを非表示/違反報告)
にんじん - これからも頑張ってください! (2018年2月10日 12時) (レス) id: 5460fa1ff4 (このIDを非表示/違反報告)
さらんりちぇ(プロフ) - 総悟大好きなので、すごく面白いです!これからも更新がんばってください! (2018年1月31日 20時) (レス) id: f4f18cc943 (このIDを非表示/違反報告)
インク(プロフ) - 沖田くんオチですか。…沖田くんオチって意外と人気あるんですよねコレが。こんな駄作者な私でも100hitも行けるくらい。沖田くんはやっぱ最高だった。続き待ってます。と言っても最後のセリフは完全に襲う気マンマンだけど。 (2018年1月8日 6時) (レス) id: 2ca11f0d25 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おそらまめ | 作成日時:2017年10月29日 20時

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