気まぐれ少女の怪談物語 捌

狂犬 17 ページ5

屈託のない笑顔を向けられると、心が温かくなる。


貴『ああ、高尾も怪我してないようで安心したよ』


実「高尾君〜！貴方もこっちに来てたのね」


いつの間にか玲央さんが高尾の腕を組んでいた。
玲央さんは高尾がお気に入りなのかな？
高尾は若干引いた感じに見える。


虹「この建物の中に赤司達がいるのか？」


葉「ここ、俺達の合宿先だよ？」


今は別の場所だけどな。
とにかく今は中に入ろう。
邪鬼に取り憑かれたやつ特定しないと何も始まらない。
…で、中に入ったはいいが、民宿の奥で眠っているはずのメンバーがいる場所には誰もいなかった。


貴『…赤司には以前、札の意味を教えたはずなんだがな…』


大破した札を見ながら沸々と怒りの感情が沸き上がる。
まさか結界が破れるなんて考えてなかったから、気配を辿ってなかった。
こちらにも責任があるが、中学時代赤司に札の貼られた結界について伝えたと思うんだけどな…。


高「ヤベェ…。Aちゃんがブチ切れる寸前だ」


葉「えー！探しに…」


実「黙りなさい小太郎！アンタ余計な事言ってAちゃん怒らせたいの！？」


今から探しに行けと？
随分簡単に言ってくれますね、小太郎は。
面倒＋迷子探し困難と判断して札を貼ったのに、これでは意味がない。


貴『…最近覚えたセリフを言ってやろう』


くるりと振り返り、高尾達を見る。


貴『フルボッコだドン…』


高「真顔でやめて！！」


葉「もうそれ、俺の知ってるセリフじゃない！」


貴『もういっかい殺れるドン…』


実「落ち着いてAちゃん！！」


拳を震わせ、笑顔を見せる。
これ以上ない面倒事にイライラは募るばかりだ。


虹「落ち着けって、神楽坂。あとで俺がシメてやるから！」


そんな中で虹村さんが私の肩に腕を回す。
あのカラー集団は虹村さんに頭が上がらないところがあるらしいし、説教については任せてもいいや。
怒るのにも体力が必要となるし段々面倒になってきた。


貴『…そうですか。まあ、どちらにせよここでごちゃごちゃ言ってても仕方ないので全員を探しに行きます』


普通、人間が札を剥がすことは出来ない。
もちろん剥がし方を知ってる者は容易く剥がせるけど、あのメンバーに剥がし方を教えた事もなければ、知ってるはずもない。
おそらく邪鬼に取り憑かれた誰かが剥がしたのだろう。


誰が札を剥がしたかなんて答えはすぐに見つかる。
さっさと犯人見つけて捕まえて、邪鬼を封印してしまおう。

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