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狂犬 33 ページ21

また描き直すなんて私は嫌だからな。
雰囲気を察してくれたのか、みんな何も言わずに入り口へと入っていく。
私の作った入り口を使い全員が元の世界へ戻るのを確認する。
チラチラと通るたびにみんな私を見てた。
謝り野郎はまだ気を失っているようだが、青峰に担がれて入り口を通っていった。
高尾だけは最後の最後まで私のそばにいた。


貴『…あとは私と高尾だけだ。早く通ってくれ。私が長く持たない』


高「…わかった」


高尾が入り口に片足を入れるのを見届ける。
完全に入り口へ入ったのを確認した。


貴『高尾!』


声をかければ、道の奥を通る途中だった高尾が振り返る。


貴『____』


高「え…」


高尾の悲しそうで驚いた顔を最後に見て私は道を閉ざした。



*******************



ほとんど力を使って体力の限界を迎えた私はその場に倒れ込む。
もう動くことさえ出来なくなった。
私はきっとここで死ぬだろう。
陣へ力を入れる事を中断出来なかったから、私は最後まで残った。
今はもう新たな陣を作る力はない。
ゆっくりと目を閉じて、ゆっくりと死を待つことにしよう。
そんな事を思っていると、突然黒くて重い気配が身体全身にのしかかってきた。
これは邪鬼の気配だ…。


「私は人間に不幸をもたらす山犬の悪霊」


頭の中で声が響く。
あの祠で聞いた恐ろしい声とは違う声のトーンだが、本当にこれは邪鬼の声なのだろうか?


「私を封じたのは、私を友人だと笑って言う奴だった」


邪鬼はそのまま自分の事を語り始めた。


「そいつの周りは私を滅する事しか頭になかった。だが、そいつは最後まで私を庇い、私に笑いかけていた」


邪鬼の声はどこか優しさに満ちていた。
昔を懐かしむ暖かさがそこにあった。


「だが、あいつの周りの力は強大で、あいつ1人ではどうする事も出来なかった。滅される前にと、そいつは悲しそうに、泣きながら私を封じた」


真実は私の知る文献と異なっているようだ。
大昔の神楽坂家が、自分達の良いように書き残したのだろう。
邪鬼が全て悪いように後世に残る記述を。


「何年、何十年、何百年。私を封じた事で命を落としたそいつの力は強く、長い時間を祠の中で過ごした」


とても悲しそうな声。


「1人とは寂しいものだ」


ああ、そうだな。
1人とは孤独だ。冷たく寂しい。


「あの時もお前はそうだった」


だけど今は違う。
私には待ってくれている人がいる。
笑顔で迎えてくれる人がいる。

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レイ - 完結おめでとうございます。続編楽しみにしています。 (2019年1月2日 19時) (レス) id: d739f229f9 (このIDを非表示/違反報告)
神代(プロフ) - 完結おめでとうございます!本当に素敵な物語でした!気まぐれ彼女も楽しみに待っています! (2017年11月17日 13時) (レス) id: f49ce96779 (このIDを非表示/違反報告)
如月レン - 完結、おめでとう御座います。最後は、少し涙が出ました。更新、お疲れ様でした。続編、今から読みます。 (2016年8月19日 17時) (レス) id: 84fcaaee34 (このIDを非表示/違反報告)
たにやん(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも楽しみに読ませてもらってました。続編、期待しています! (2016年8月12日 0時) (レス) id: 5939541d69 (このIDを非表示/違反報告)
- 「気まぐれ少女」の完結おめでとうございます!!サイガさんの作品はどれもおもしろいので、いつも更新されるのを楽しみにしています!!気まぐれ彼女も更新頑張って下さい。ファイトです(*^_^*) (2016年8月10日 13時) (レス) id: 8ed0b679fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サイガ | 作成日時:2016年7月11日 20時

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