狂犬 27 ページ15
勝ち目がない事は明白だが、やらないわけにはいかない。
頭の中で戦闘シミュレーションを何パターンもしているけど、そもそも私は体育会系ではないため俊敏には身体は動かない。
貴『さーて、どうしたもんか』
余裕なく呟きながら、じわじわと邪鬼(謝り野郎)に詰め寄っていく。
「私と争わない方が良かったと、その身を持って知るがいい」
邪鬼が手をこちらへ突き出した瞬間、大きな風が巻き起こった。
この風、ただの風じゃない。
ナイフで斬りつけられているような鋭い風。
そんな事を思っていると、本当に肌がナイフで斬りつけられた傷が頬や腕、脇腹に出来ていた。
服ごと破けて皮膚にまで到達している傷は、少しずつ血を流していた。
放っておいても死にはしないだろうが、ピリピリと痛む。
ダメだ、これは近づくのも厳しそう。
こうなったらかなり無茶だが、無理矢理、邪鬼と謝り野郎を引き離すしか方法はなさそうだ。
謝り野郎の精神は眠っているなら、謝り野郎には影響しないはず。
ただ、私は…
「放っておけば良いものを、まだやるか小娘」
貴『ああ、そいつを返してもらうためだ』
持ち合わせた札を、謝り野郎の身体のどこにでもいいから貼り付ければ、後はなんとかなる。
一瞬でいい、その一瞬のスキに…。
そう思って私は、持っていた武器を謝り野郎に向けて投げつけた。
「諦めたか、だがそれが正しい」
貴『まだ諦めねぇよ』
邪鬼が武器に視線を向けたその一瞬で、真正面から突っ込む。
だけどとても強い力によって跳ね返されて、身体が後方へと飛んだ。
貴『っ…』
受身を取ったからそれほど痛くはないが、それでも痛いものは痛い。
ゆっくりと身体を起こして邪鬼を見た。
「小細工など効かぬ」
やっぱり放っておけば厄介な事になるくらい強力な力の持ち主だ。
神楽坂家の文献にも邪気についていろいろ書かれてあったし、文献通りのヤツだ。
だけど…
貴『…それは、身体を見てからにしてほしいものだな』
私は飛び込んで、体当たりする勢いで突っ込んだおかげで、邪鬼がかざしていた手に札を貼り付けることが出来たのだ。
「な!う、ぐ、うぉぉウヴァぉぉぉぉぉぉぉ!!」
瞬間、けたたましい叫び声とともに、謝り野郎の身体から紫色の靄が飛び出して来た。
そして、パタリと紙人形みたいに謝り野郎が倒れた。
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レイ - 完結おめでとうございます。続編楽しみにしています。 (2019年1月2日 19時) (レス) id: d739f229f9 (このIDを非表示/違反報告)
神代(プロフ) - 完結おめでとうございます!本当に素敵な物語でした!気まぐれ彼女も楽しみに待っています! (2017年11月17日 13時) (レス) id: f49ce96779 (このIDを非表示/違反報告)
如月レン - 完結、おめでとう御座います。最後は、少し涙が出ました。更新、お疲れ様でした。続編、今から読みます。 (2016年8月19日 17時) (レス) id: 84fcaaee34 (このIDを非表示/違反報告)
たにやん(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも楽しみに読ませてもらってました。続編、期待しています! (2016年8月12日 0時) (レス) id: 5939541d69 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 「気まぐれ少女」の完結おめでとうございます!!サイガさんの作品はどれもおもしろいので、いつも更新されるのを楽しみにしています!!気まぐれ彼女も更新頑張って下さい。ファイトです(*^_^*) (2016年8月10日 13時) (レス) id: 8ed0b679fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サイガ | 作成日時:2016年7月11日 20時