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岩本「Aさんの隣は安心すんのかな」
「……いや、そんなことは……」
岩本「マジでAさん何者?」
からかうように笑う岩本さんに私も苦笑いを返す。
やがて車がすっと止まって、岩本さんの「着いたよ」の声でうとうとしていた意識が引き戻される。
どうやら、私も眠っていたみたいだ。
隣の深澤くんは未だに私の肩に頭を乗せて眠っていた。
起こすのを躊躇うほどの熟睡っぷりだけど、彼の肩を揺らして声を掛ける。
「深澤くん、着いたよ」
深澤「……んぇ? ……、え、俺寝てた?」
岩本「ぐっすりな」
そう言って岩本さんは車から降りていく。
まだ眠そうな瞳で「マジで?」と首を傾げる深澤くん。
自分でもびっくりしてるのかな。
疲れてたんだねって声を掛けたら、「うん、んー、うん……」なんて歯切れの悪い返答。
でも、頬を掻いて少し恥ずかしそうにしてたのが可愛かった。
外観は築年数が古めの一軒家。
でも、リノベーションしたらしく中に入ると古さは微塵も感じられなかった。
どうやら昔、岩本さんのおじいさんとおばあさんが住んでいたらしい。
こんな素敵なところに、家賃2万だけで住めるなんて。
本当にいい物件だと、感動を噛みしめていた。
共同で使う場所を岩本さんに案内してもらってリビングへと戻ってくる。
リビングはとても広くて開放感があって、オープンキッチンなところもすごくお洒落。
岩本「各自の部屋は二階なんだけど、ちょっとAさん用の部屋がまだ片付けられてなくてさ」
物置になってるから片付けないといけないらしい。
急に決まったことだから仕方ないし、逆に申し訳ない気持ちになる。
「私、ソファで寝ますよ」
深澤「……ねぇ、Aさん。添い寝してくんない?」
岩本「は?」
キッチンの冷蔵庫から飲み物を取り出して深澤くんが突然可笑しなことを口走る。
家に到着してから、なぜか難しい顔をしながら静かになっていると思ったら。
反応に遅れて固まっている私の代わりに、岩本さんが鋭いツッコみを入れた。
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サイ(プロフ) - takkimakkiさん» 初めまして、とても嬉しい感想ありがとうございます!皆さんに伝わるように丁寧に綴るのを心がけていたので、そう言っていただけて嬉しいです。不定期更新ではありますが、これからも見守っていただけると励みになります(^^) (2023年3月18日 20時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - 初めまして!このお話に出会い、一気読みさせていただきました。お話の中に引き込まれて、頭の中でドラマのように思い浮かぶステキな日本語と物語で、大ファンになりました。これからも楽しみにさせていただきます! (2023年3月16日 9時) (レス) id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - サイさん» え、そんなッッ‼︎あんな駄作達なんか、サイ様の足元にも及びませんからッッ‼︎でも、アドバイスなど。気付いた点を教えていただけると幸いです。 (2023年1月2日 23時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
サイ(プロフ) - にふらー@低浮上さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます◎細かいところまで見てくださってるんだなと思い嬉しくなりました◎更新頑張ります◎にふらーさんの作品も、時間がある時に読ませてもらいたいなと思います◎ (2023年1月2日 12時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - コメント失礼しますッッ‼︎『前の席の岩本くん』が大好きで、作者様が同じだとわかって、心の中で発狂しました笑笑 サイ様の文の書き方など、勉強する点が沢山あるので、続きがとても気になります…‼︎更新、頑張ってくださいッッ‼︎ (2023年1月2日 0時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サイ | 作成日時:2022年11月23日 19時