# 13 ページ13
.
深澤「じゃあ、ベッド……寝てもらっていい?」
「は、はいっ」
ここまで来たら、もうどうにでもなれ……!
私は深澤くんのベッドに腰かけて壁際に横たわった。
背中の向こうでギシッとベッドがしなる音が響いて、深澤くんの気配がする。
電気が消えた暗闇の中で背中が微かに触れあって、心臓の音は最高潮を迎えていた。
もしかしたら、深澤くんにも伝わるんじゃないかと思うくらい。
これじゃ、私が眠れない気がする。
深澤「……Aさん」
「……え?」
深澤「抱きしめちゃダメ?」
その声があまりにも弱々しかったから、いつの間にかいいよ、って答えてた。
深澤くんがゆっくりと寝返りを打つ衣擦れの音が、耳に届く。
流されやすいなって我ながら思う。
でも、放っておけない、ただそれだけなんだ。
深澤くんの腕が回ってきて、体が密着する。
ふわりと抱きしめられた瞬間に、深澤くんの匂いがした。
深澤「……やっぱ安心する」
背中に感じる温もりも、掠れた声も、あの頃を呼び起こす。
深澤「……あの頃よりもっと綺麗になって可愛くなってて、びっくりした。なんか、佐々木に話しかけられてたじゃん、」
「……うん、」
深澤「大丈夫だった? ……何もなかった?」
地味で目立たない私を可愛いと言ってくれるのは、あの頃から深澤くん一人だけだった。
掴めない人だった、何を考えているのかわからない人だった。
あの頃もそうだったし、今もそう。
深澤「……俺、ずーっと、忘れらんなかったの、」
「……え?」
深澤「……Aのこと、ずっと、ずっと……」
「……深澤く――、」
思わず振り返ってしまった。
深澤「…………すぅ、」
「…………」
……寝てる。
ふぅ、と息を吐いた。
安心したのか、呆れたのか。
ただ少し、その先の言葉が聞きたかったと期待してる自分がいた。
" A "
久々に名前を呼ばれて、私の鼓動はおさまりそうにない。
「……寝れるわけないよこんなの、」
.
1186人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
サイ(プロフ) - takkimakkiさん» 初めまして、とても嬉しい感想ありがとうございます!皆さんに伝わるように丁寧に綴るのを心がけていたので、そう言っていただけて嬉しいです。不定期更新ではありますが、これからも見守っていただけると励みになります(^^) (2023年3月18日 20時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - 初めまして!このお話に出会い、一気読みさせていただきました。お話の中に引き込まれて、頭の中でドラマのように思い浮かぶステキな日本語と物語で、大ファンになりました。これからも楽しみにさせていただきます! (2023年3月16日 9時) (レス) id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - サイさん» え、そんなッッ‼︎あんな駄作達なんか、サイ様の足元にも及びませんからッッ‼︎でも、アドバイスなど。気付いた点を教えていただけると幸いです。 (2023年1月2日 23時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
サイ(プロフ) - にふらー@低浮上さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます◎細かいところまで見てくださってるんだなと思い嬉しくなりました◎更新頑張ります◎にふらーさんの作品も、時間がある時に読ませてもらいたいなと思います◎ (2023年1月2日 12時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - コメント失礼しますッッ‼︎『前の席の岩本くん』が大好きで、作者様が同じだとわかって、心の中で発狂しました笑笑 サイ様の文の書き方など、勉強する点が沢山あるので、続きがとても気になります…‼︎更新、頑張ってくださいッッ‼︎ (2023年1月2日 0時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:サイ | 作成日時:2022年11月23日 19時