Walhalla～英雄たちの集う場所～ ……そこで働くホストたちの日常…… (ページ6)

今日:4 hit、昨日:7 hit、合計:108,201 hit

6 ページ6

雅紀は食事をテーブルの上に置くと智に頼まれた物を取りに自室に戻った。

クローゼットを開けて考える。
貸す……ではないな。
進呈だな……と結論付けて使用頻度の低い物を数枚選んだ。

どうせ上下ワンセットって訳にもいかないだろう。
当面の着替えは必要だ。
なら、それを入れるカバンもいるな……

気がつくと小さいとはいえ、ボストンバックがパンパンになっていた。
………こんなもんだよな？

納得してカバンを持って智の部屋に戻る。

食べ終わったのか、簡易キッチンで智が洗い物をしていた。

「おかえりーー。
ありがとね」

雅紀を見つけてふわんと笑いながら礼を言う。

「潤に渡して。
着替えたらオーナーんとこ行くから」

「一緒に行くの？」

「うん。
ここで働くって」

なぬ？
何時の間にそんな話が決定してるの？
当の本人を見ると、ちょっと不安気な顔で頷いた。

そんな彼に着替え他の入ったバックを渡す。

「これ……」

「当面の着替えとして使って。
もう殆ど着てない奴だから返さなくていいよ。」

「ありがとうございます」

お、ちゃんと礼は言えるんだ。
お坊っちゃまたちの中にはしてもらうのが当たり前で礼を知らない者もいる。

「本気で働くの？」

「……はい」

……言いくるめられたね。
ああ見えてもホストだ。
特に智は相手を誘導するのが上手い。

それも無意識でだ。
しかも相手をいい気分にさせながら……
そう良くも悪くもタラシである。

彼のほっこり……にっこりではない。
ほっこりスマイルは最強無敵だ。
それを素人がやられたら太刀打ち出来ない。

御愁傷様……

心の中で手を合わせる。

「でも、部屋一杯じゃなかった？」

「なんとかなるだろ？」

……簡単に言う？
言えるのは、あなたが今いるスタッフの中でも古参な方だから。
何よりオーナーがあなたの保護者だからだよ。

着替え終わった潤を伴い一緒に部屋を出る。
雅紀が自分の部屋に向かう背中に

「行って来ま～す」

お気楽な声が掛かった。
その声を聞きながら、まぁ何とかなるんだろうなとお気楽に考える事にした。

１時間後………
お気楽ほっこりさんは氷点下のブリザードを巻き起こしていた………

潤を自分の部屋に残し雅紀の部屋で文句をタラタラタラタラ……

「そりゃオーナーの意見が正しいんじゃない？」

「そうだけど俺じゃなくてもよかない？」

「…………」

あなたしかないと皆思ってる……とは面と向かって言いにくい。