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薄暗い店内のカウンターに並んで座る智と潤。
「大分慣れたか？」
「慣れたっちゃ慣れたけど……
毎日、やっぱ緊張はする」
「緊張はな、ある程度しといてもらわないとな」
「あんたが緊張してるようには見えないけど」
「俺？
俺はあんましないな。
客にリラックスして貰うのにナイトが緊張し過ぎてたらリラックス出来ないだろ」
「それがおまえの持論か？」
カウンターの向こうから話に入って来る。
元ナイトのバーテンダーには話が通じている。
「そんな大層なもんでもないよ」
「おまえの席はいつもほんわかしてたな、どんな客に着いてても。
客を選ばないと言うか……」
「そんな事ないだろ？」
「あるだろ。
だから初見の客はおまえに大概振られてたろ」
そうだっけ？と考え込む。
……確かにそうだった気がした。
「だろ？」
「うん……」
「次に繋いで行かなきゃなんないからな」
「よくわかんないよ」
話すのは苦手だから客に話してもらうよう相槌を打つようにしているだけなのだ。
大概の客は自分の自慢話をしたがるから存分に話してもらっていた。
それを聞いて凄いですねと持ち上げる。
そうして時間は過ぎて行く。
「おまえはおっさん連中に人気だもんな。
おっさん１人の席に着くの多いし。
御婦人連れの席は殆どないだろ。
おっさん向けの接客か？」
「そうかなぁ？
話聞くだけだよ。
おっさん達って話したがるから」
「自慢話を延々と聞くのって結構、苦行だぞ」
「そう？
楽じゃん」
あっけらかんと言い放ちぐびりとグラスの中身を飲み干す。
「おかわり、さっぱり系でお任せ」
「相変わらずよく飲むな」
「そう？」
「酔わないか？」
「ほろほろしてるよ」
「………そっか。
潤はどうする？」
「俺もおかわりお任せます」
ぐいっと飲み干しグラスを差し出す。
「おまえも結構イケるくちか」
「学生時代、結構コンパとか参加してましたね」
「あ、おまえ大学どうなってんの？」
思い出したように智が尋ねる。
「後一年あるけど貰ってる給料からなんとかなってる。
卒業だけはしたいから」
「偉いな」
学歴なし……小学校すら行ってないから最低限の勉強は教わったが、改めて机に向かって勉強する……のは苦行だった。
机に向かう習慣がないから。
「潤はさ、将来どうすんの？」
「今は思案中。
父親の跡を継ぐつもりでいたからさ」
「取り返すのか？」
「どうだろうな……
まぁ卒業までに父親と話するよ」
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
