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……癒されてからの嫉妬の嵐。
人の哀しみや辛さに敏感に感じとっては引き寄せて、温もりを分け与える。
誰にでも分け隔てなく……
自分だけじゃなく……
それでもそれが智だと納得する。
……だが頭では納得するけど感情は別。
分かっていても胸の奥にちくりと小さな痛みを感じてしまう。
そしてそれも智なのだ。
「シャワーする？
ごはん食べに行く？」
「シャワーする」
「その間にドクターに連絡して来てもらうよう手配しとくね」
「ありがとう」
ぎゅっと力がこもる。
その手をポンポンと叩いて緩めてもらうとくるりと智の向きを変える。
そして正面からバグ。
髪に口付けて優しい香を吸い込む。
暫くして智を離し
「行っといで」
「ん…」
パタパタと部屋を出て行くのを見送る。
扉が閉まるのを見届けてベッドの方に振り向く。
「潤、起きてる？」
「………」
起きてはいる。
ばっちりラブシーンもどきを観賞させられて目が覚めた。
雅紀は返事を聞かずにベッドサイドにあるナイトテーブルの引き出しから体温計を取り出す。
「計っといて。
ドクター呼ぶから」
「……大丈夫だよ」
掠れた声で返事がある。
「体調管理は基本中の基本。
ちょっとでも気になったら医務室に行く。
誰かに体調悪そうって密告されたらペナルティだからね。
１週間、毎食青汁とかノニ茶とかせんぶり茶とかつくよ」
テレビの罰ゲームでよく聞く名前が並ぶ……
それを聞いてそそくさと体温計を脇に挟む。
その間に雅紀は医務室に電話をした。
「微熱ちゃあ微熱だね。
傷の消毒もしてくれるって。
傷が残ったら仕事出来ないからね」
言いながら潤の頭をくしゃりと撫でる。
「俺と智はごはん食べてくるよ。
帰りに潤の分持ってくるね。
ドクターはサブキー持ってるから勝手に入って来て治療して勝手に帰るから気にしなくていいよ。
大人しくしててね」
ちょうど行水の終わった智に潤に話した話をそのまま伝える。
「わかった。
ありがとね、雅紀。
潤、なんか食べたいもんある？」
「特には……」
「じゃあ、しげさんお任せスーパースペシャルメニュー頼んどく〜」
大袈裟なメニューを軽いノリで言われると若干不安にある。
昨日の食べた雑炊の味を思うと外れる事はないと思うが……
「大人しく待っててね」
「すぐ帰ってくるからね」
２人して手を振って優しい笑顔を残して出て行く。
……２人が出て行くとしんと静まりかえる。
大きく息を吐き、目を瞑る。
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
