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静かに階段を降りているだけで店内の空気が変わった。
降りきると２人並んで片手を胸の前に置き、優雅に恭しく頭を下げる。
自然な流れに感嘆の溜め息しか出ない。
ナイトがあれで、ジャックとエースこれで……
キングとクイーン、ジョーカーならどうなるんだ？
そっと３人の顔を見る。
クイーンは確かに美人だ。
キングは精悍なワイルドな感じの男前。
ジョーカーは可愛い感じ？
通常モードに戻って？いる３人はそんな感じだ。
先程の威圧的な輝々しさや妖しさ、飄々しさはなりを潜めている。
「まずはお花ちゃんとひよこの動きを見ようか」
光一が不意に潤に目を合わせた。
そして指差す先にはナイトの後ろで膝まづいて待機しているひよこと壁際に立つ花ちゃんず。
「ひよこはナイトがその日の気分と本人の実績、客によって指名する。
指名されなかった者は壁に立ち目線だけで店内に目を配るんだ。
まずはそこからだよ」
そう言って艶やかに笑う。
……思わず見惚れる。
「そして盗め。
会話の仕方、気遣い、相手に寄って変えていく接客、仕草……
兎に角見て聞いて覚えろ」
目付きが真剣なものになり言葉が熱を帯びる。
「それから自分を知れ。
知って自分の遣り方を試行錯誤して考えろ。
同じでは駄目だ。
自分だけものを見つけて物にしろ」
「珍しく熱いな、クイーン」
「………」
言われて自分でびっくりしているようだ。
「辞めるからかなぁ。
………それに」
言葉を切って潤を見た。
そして小さく息を吐く。
「智の拾って来る子は気になるんだよな。
あいつ嗅覚だけは鋭いからさ。
なんか嗅ぎとって連れて来る」
「何を嗅ぎとったのか本人はわかってないけどな」
何を嗅ぎとられて連れて来られたのか……
連れて来た本人がわかってないと言う事は誰にもわからないって事だろう。
それぞれが頭の中で突っ込んでいた。
「そろそろ時間じゃね？
クイーンはまだ？」
「22時〜だからまだもうちょっと。
１時間の為に俺はここにいるんだよ」
「お疲れ〜。
延長したれ」
「俺が嫌〜」
「おまえら会話がダレ過ぎ。
行くぞ」
「おっけ〜」
こんなにダレているのに……
出て行った２人の背中が扉の向こうに消えるのを見届けて、視線を店内に移す。
次はキングとジョーカー。
先に出たのはジョーカー。
軽やかに階段を降りる。
下まで降りるとターン……からのウィンク。
しかも何故か上向き。
まるでマジックミラー越しに潤に向けるように。
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2020年2月10日 8時
