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「お粥かうどん、どっちがいい？」
タクシーの中、不意に聞かれた。
「……何？」
「昼ご飯。
弁当、無理だろ？
何か作るよ」
少し喉は痛いけど、食べれない事はない。
てか、何も食べる気はないんだけど。
「少しでも食べてから薬飲まないといけないだろ」
見透かされたように言葉を続けられた。
だったら……
「卵粥……」
風邪を引いて熱が出た時の我が家の定番。
ばあちゃんの卵粥。
ばあちゃんが作る優しい味の卵粥。
誰かが熱がある時だけ作ってくれるそれを食べたい。
イチが作れるかどうかは知らないけど。
「おばあさんの味と一緒って訳にはいかないけど、そらでいいなら作るよ」
そうなるよな。
それでも
「ばあちゃんの卵粥がいい」
「作るけど違ってても文句言うなよ」
ばあちゃんはもういないし、イチはばあちゃんじゃないのもわかってる。
俺も違うのなんて当たり前だって理解できる年だ。
でも熱出した時の定番の味は忘れられない。
家に戻って
「着替えて部屋で寝てて。
できたら持って行くから」
「……...」
返事をするのも億劫で頷いて部屋に戻る。
寝間着にしているTシャツとスウェットのズボンに着替えてベッドに横になる。
熱のせいでうつらうつらしてたみたいで額に感じた冷たい何かで目が覚めた。
でも瞼が重い。
「大丈夫か？
卵粥できたけど、食える？」
優しく撫でられる頭。
母さんやばあちゃんとは違うのに同じ撫で方。
頷くとそっと背中を支えられ起こされる。
「座ってられる？」
声が出にくくて頷くと目の前にペットボトルが差し出される。
「先にこれ飲んで。
喉が痛いんだろ。
乾いてるだろうから潤してから食べよ」
水のペットボトルを受け取って１口飲んだら止まらなくて半分程一気に飲んだ。
大分喉が乾いてたんだな。
「１人で食べれる？」
ペットボトルを受け取り代わりに差し出されるお椀。
黙ってそれを受け取る。
「見てたら食べにくいだろうから部屋出て後から様子見に来るよ。
片付けもあるし、薬も飲まないとな」
優しい微笑み。
こんな風に笑うんだって忘れてた。
それくらい真面に顔を合わせてなかったんだ。
宣言通りイチが部屋を出たのを見届けてお椀の中の卵粥を１口掬って口に入れる。
……これ。
ばあちゃんの卵粥だ。
俺自身ばあちゃんが亡くなってから食べてないから味の記憶は薄れているだろうけど……ばあちゃんの卵粥と同じ味な気がする。
なんで？
なんでイチが作れるの？
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蒼羽(プロフ) - きよさん» コメントありがとうございます。根本的にイチくんは弟くんたちが何よりも大好きなので（嫌われてても）それはゆるがないでしょう。どこまで行っても可愛い弟です。自分の事より優先してしまうのでそれに振り回されながらもデレる五十嵐兄さんずになると思います(笑） (2021年6月1日 13時) (
レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽(プロフ) - 檸檬さん» コメントありがとうございます。まだまだ遠慮してしまうイチくんなので五十嵐のお兄さんたちには頑張ってもらいましょう。そんなイチくんも可愛いとデレまくるお兄さんたちでしょうが…我慢が癖になってるのできっとサブちゃん以上の天然爆発してくれると思います（笑） (2021年6月1日 13時) (レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽(プロフ) - みみさん» コメントありがとうございます。甘やかすは五十嵐兄弟にお任せあれ…ですね。なんと言っても全員社会人。色んな所に連れ回し美味しいモノを食べさせまくるでしょう。でも弟たちにお土産を買いたくなるイチくんに負けて弟たちのお土産を買うお兄さんたち…ありですね。 (2021年6月1日 10時) (レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽(プロフ) - NOAさん» コメントありがとうございます。ジロちゃんは安定のヘタレさんなのでやはり末ズの頑張りでしょうか？今までのツンツンから一転甘えまくるかなぁ？甘やかす五十嵐家、甘えまくる舞賀家の対峙もありかと思ってます。どう転がって行くのか私も彼らにお任せです(笑) (2021年6月1日 10時) (レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
蒼羽(プロフ) - あきさん» コメントありがとうございます。そうですね、双方正反対なので選びようがないと言うか、そもそも比べようもないし、そんな事思いもしないのが一郎くんかな…とも思ってます。まだまだ五十嵐家には遠慮し舞賀家では不動の弟たち。何がどう転ぶのか楽しみにして下さい。 (2021年6月1日 10時) (レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2021年5月5日 2時
