カルテ23 ページ37
大貴said
大貴「光くんから聞いたんだ。
伊野ちゃんがコードブルーがトラウマになっている理由。」
慧「…しょうもないでしょ？」
過去の自分をあざ笑うように言う彼に俺は首を横に振った。
大貴「医者なら1度はぶつかる壁だよ。
でも、それを乗り越えることはできない。一生向き合っていく問題だもん。
命に重いも軽いも優劣なんてないから。」
慧「今日のこのオペで、過去が乗り越えられると思った。
あの子を救えたって分かった時、乗り越えたと思った。
でも、違った。過去は過去だった。乗り越えられるものじゃないね。
いつ、自分でも救えない命と向き合うのか分からない。
もしそうなったときに、またその過去に固執してしまわないか、ちょっと怖い気もするよ。」
救えない命…
大貴「だから、俺、乗り越えなくてもいいと思うんだよね。」
不思議そうにしている彼の雰囲気を察して、俺は付け足した。
大貴「壁って思わないことにしたんだ。
“扉”だと思うことにするよ。
無理して乗り越えなくてもいいし、乗り越える必要ないよ。
立ち止まりたかったら、立ち止まればいい。
扉を開けたくなかったら、開けなくてもいいんだよ。
ただ、いつかは開けないといけない。前に進まないといけないから。」
…。
何も答えない彼に俺は続けて言った。
大貴「救えない命もあるかもしれないけど、俺たちが救える命もあると思うんだ。
この手からこぼれていく命が、1つでも減るように俺たちは前に進まないといけないと思う。」
彼から小さな声で、返事が聞こえた。
大貴「重い扉は開けなくてもいいよ。立ち止まることも大切だと思うから。
でも、前に進まないでずっとそこに固執するようだったら、
その扉俺が開けに行くから。
どんな重い扉も、伊野ちゃんの非力じゃ開かない扉も俺が一緒に開けるよ。
それでも無理なら薮くんや光くんも呼ぶし、７も呼ぶよ。あと高木も。
皆で開けるよ。」
俺が彼の方を見たころには、彼もこちらを見ていて、
何かを決心したまっすぐな目をしていた。
そして、
慧「俺、そんなに非力じゃないから。」
って悪態をついた彼は、俺の頭を軽くポンポンとして先に歩いて行ってしまった。
ちょっと自分が大きいからって…
もちろん、小さく言われた感謝の言葉を聞き逃してはいないし、
彼の後ろに見えた夕日も、きっと彼を、彼の未来を応援していると分かっていた。
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@saku_ra(プロフ) - 山田くん推しなので、山田くんのお話が読みたいです！お願いします‼️ (2022年9月30日 19時) (
レス) id: b6ea1c7687 (このIDを非表示/違反報告)
あーにん(プロフ) - りほぽんさん» ありがとうございます！！ (2020年5月7日 21時) (レス) id: 2c4af11cee (このIDを非表示/違反報告)
りほぽん(プロフ) - この作品とても好きなので、更新嬉しいです！これからも楽しみにしております！ (2020年5月7日 21時) (レス) id: 4a5502216a (このIDを非表示/違反報告)
あーにん(プロフ) - Aさん» ありがとうございます！！伊野尾ちゃんがメインで頑張ってくれます (2020年5月6日 1時) (レス) id: 2c4af11cee (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 更新ありがとうございます！ 伊野尾くんメインのお話（？）っぽくて伊野尾くん担当なので続きが楽しみで仕方ないです！ これからも応援しています。 (2020年5月6日 1時) (レス) id: 24e73c4584 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あーにん | 作成日時：2020年2月26日 21時
