愛して、俺らは消え去ろう。3【川村壱馬】 (ページ6)

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だから… ページ6

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車内は凍りついたのかのように静かだった。
玲於さんはちょっとウトウトしてる。

なんだか、顔を見ることが恥ずかしくなっちゃって
窓の外の夜景を眺めていた。

オシャレなお店。

汚い居酒屋。

フラフラ歩くサラリーマン。

道の脇で寝るホームレスの人。

首を反対に向ければ目を瞑る玲於さん。

みんな顔が違う。

みんな声が違う。

みんな服が違う。

みんな家が違う。

みんな生き方が違う。

みんな違う。

玲於さんとも違う。

みんな違うのにどうして
自分と違う人を好きになれるんだろう。
仲良くなれるんだろう。

玲於さんと同じところなんて人間ってことぐらいなのに、どこも共通点なんてないのになんで好きになれるの？

玲於さんもなんでこんな私とご飯行きたいとか思えるの？

玲｢あかりちゃん。｣

『は、はい！？』

ぼーっとしていたから急に名前を呼ばれて
大きな声で返事をしてしまった。

玲｢あしたのあささぁ、早いの？｣

亀のようなスピードで
目を瞑りながら話してる玲於さんがちょっと可愛かった。

『明日はそこまで早くない！玲於さんは？』

玲｢ん～あぁ、そこまで早くないけど…遅いって言ったら嘘になるかも。｣

『大丈夫なの？』

玲｢こんなん、しょっちゅうだしさ。あかりちゃんに会うと明日も頑張ろ～って思えるんだよね｣

『……。』

玲｢でも、こんな遅くまで付き合ってもらう予定じゃなかったんだけどね～。ごめん。｣

『いやいや、全然。』

玲｢あれ、待ってもうすぐあかりちゃんの家じゃね？｣

『え、目瞑ってるのに分かるの？』

玲｢俺、目がもう一個あるから。｣

『なにそれ…笑』

玲｢目3個あるって楽だよ。おすすめ。｣

『本当にもう直ぐ私の家だ。』

玲｢ほーらね。｣

このタクシーの行き先は私の家だったみたい。
玲於さんが運転手さんにお願いしてくれたんだ、私の家の住所知ってたんだ。

エントランスの前に止まってドアが開いた

『あ、代金。』

玲｢いいよ。このまま俺の家行くし。｣

『でも…』

玲｢どうせ、ここいら辺通るから大丈夫。｣

『じゃあ、お言葉に甘えて…お休みなさい！』

玲｢うん。おやすみ～。｣

タクシーから降りて
マンションに入ってエレベーターに乗った。

そこで気づいた。

玲於さんの家は私の家の真反対の方向だということ。
さっき待ち合せた時駅の反対側から来てたから…

あぁ、こういうところなんだな

こんなに優しい人に出会ったの初めて。

だから、好きになれるんだ。

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