悪磨くん~Fuma.K~

14：夏祭り ページ14

A「やだってば！！」




母「お母さんも嫌よ！」





待ち合わせの18時になるというのに
浴衣を着ないと外に出さないという
お母さんに呆れる。





A「…わかったよ…もう。急いでね」






そう言うとお母さんは目を輝かせて
私に浴衣をせっせと着せた。





思っていた以上に、髪も浴衣も気合いが
入っていて急に行きたくなくなる。





A「やっぱり行くのやめようかな」




母「行きなさい」





さっきまで外に出さないと言い張っていた
お母さんが嘘のように無理やり家から出そうと
背中を押す。





A「わかった…行くよ…」






家を出て携帯を見るともう18時半に
なっていて足早に神社へ向かった。






A「樹くん！」




樹「…っ」





私を見るなり固まる樹くん。
絶対、気合いが入りすぎて引かれた。





A「お、お母さんが無理やり着せて…
気合い入りすぎてキモいよね…」





樹「全然…！可愛いよ」






恥ずかしそうに言う樹くん。
なんだかこっちまで恥ずかしくなる。






樹「い、行こうか」




A「うん」






地元のお祭りなのに驚くほど人が多くて
迷子になったらきっと終わりだ。





樹「人多いな」




A「そうだね」




樹「あ、山内のたこやきだ」





屋台を指差して言う樹くん。
地元で有名なたこ焼き屋さん。




A「ほんとだ。山内のたこやきすごい
美味しいよね！」




樹「やっぱりAも知ってた。
友達に言っても全然知らなくてさ。」





A「こんなに美味しいのに知らない
なんて損だよね」




樹「まぁ、そっちの方が特別感あるけどな」




A「たしかに」





山内のたこやきのおかげで話も弾み、
風磨くんのことも忘れて楽しんだ。






終盤になった夏祭りでは花火が打ち上げられて
その下でキスするとそのカップルは永遠に
結ばれるというジンクスがある。







ﾊﾞｰﾝｯ






A「もう花火？」




樹「時間経つのあっという間だな」




A「そうだね」






花火を見るために人が一斉に集まる。
人に囲まれてきつきつ状態。





ﾄﾞﾝｯ





誰かに押されて樹くんに寄りかかってしまう。





A「ご、ごめん！」




樹「いや…いいよ」





また気まずい空気が流れる。





ﾄﾞｰﾝｯ




だけどそれは花火が消し去ってくれた。





A「綺麗だね」




樹「A」




A「ん？」

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